馬鹿騒ぎ
43 便利屋さんはだれでしょう
「クッキーはもっと可愛い顔だったはずなんだが」
「3メートルもあって可愛い顔だと?ふざけるな!」

止まることのない二人の会話。おびえた表情の男は顎をガチガチ言わせながら、言葉を紡ごうとする。

「あ、あの女…!!化け物が…女の血が…!化け物…!」
「何を言ってるんだ、こいつ」

赤毛の男が、駆け込んできた男に近づく、その時、

「…見つけた!」

一人の女がやってきた。

*

「リア?」
「……なんだ、間に合ってたのね」

赤い髪のクレアの後ろには黒髪の、わたしが彼と一緒に選んだドレスを見にまとった女の子がいた。

「その子がシャーネちゃん?」

なるほど、美人だ。こんな美人がナイフで列車をよじ登るだなんて世も末だわ。布の中の肉塊が、ごそりと大きく動いた。どうやら本格的にくっつきそうだ。

「お前血だらけでどうしたんだ」
「わたしの血じゃないよ」
「っ…血…!化け物…!」
「はいはい、化け物扱いで結構ですよ。あ、そうだクレア」
「オレはもうクレアじゃないぞ」
「あー、そうそう。フェリックス・ウォーケンだったかしら、便利屋の?」
「ああ。便利屋というか殺し屋だがな」
「じゃあ、頼まれてくれない?わたし疲れちゃったの」
「コイツか?」
「そう。依頼料あげるから。殺さなくていいよ、生け捕りだから。」
「いい。この前、タダ働きする約束したしな。」
「そうだった、すっかり忘れてたわ」

クレアと話しているうちにどうやら左手は元に戻ったようである。指先と手首の神経が繋がる痺れたような感覚に背筋が軽く震えた。布を外して、わきわきと左手を動かしてみる。

「な…!左手が、元に、」

怯えすぎて話にならない。言い終わる前にクレアの手刀が入り、男はいとも簡単に落ちた。

「こんなのタダ働きにも入らないな。」
「ちょーっといじめすぎちゃったみたいでね、」
「ほどほどにしろよ?」
「あなたに言われたくないなあ」
「あー、理解不能な話をしよう。俺はここで貴様と闘っていたわけだが?貴様とはもちろん、赤毛、お前だ!俺は今の状況が理解できない。理解できないということは人間の営みにおいて……どういうことだ?…理解できないな。」
「まあ、端的に言うと邪魔が入ったわけだが」
「そう、それだ!しかし、それを敵のお前に教えてもらう今の状況が俺には理解できない!」

びしいっ!と鋭くレンチを向けられたのは、わたしだった。

「お前はなぜここに来た!」


なぜって、伸びてるこいつがここに逃げてきたから。ただそれだけ。
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