さて、これからどうしましょうか。とりあえず、NYに帰ってきたはいいものの土地勘が全くと言っていいほど無いから夜に行動するのはまずいかな。そう思って、ひとまず部屋に帰ることにした。
「(だって好きにしていいんだもんね)」
早急に殺せ、とか言う話じゃないってことは周りにはそれほど影響力のない奴らなんだろう。薬を持ち出したのだとしたら話は別だがそうわけでもないらしい。部屋に戻ったらとりあえず、明日から必要なものを手入れしないと。日中に動くのならあまり音が派手じゃないものを選ばないとね。サイレンサーは持ってきただろうか。最低限のものしかNYに運んでこなかったから、もしかすると使えるのがないかもしれない。そんなことを考えながらアパートの階段を登っていると、わたしの部屋から人影が出てきた。
「…あ、お疲れ様です。リアさん」
「エニス…さん?」
「僕もいるよ」
「あぁ、うん。見えてる見えてる。」
どうやら、朝方のことをまだ根に持ってるらしいチェスがむうっと唸っている。
「荷物運んどいたよ」
「そういえば頼んでたね。ありがとう、エニスさん。チェス。」
「仕事早く終わったんだね。もうしばらく帰ってこないんだと思ったよ」
「いやー、実はまだ何もやってないのよね。」
「……どういうこと?」
「好きなようにしていいって言うから、とりあえず昼間に動こうと思って。」
「普通夜にやるんじゃないのかな、そういうの」
「このあたり良くわからないしね。それに、昼でも夜でもわたしには関係ないよ」
心なしかチェスの顔は不愉快な顔をしているように見える。巻き込まれる、とか心配しているのかもしれない。暗くてよく見えないけれど、きっとそんな顔をしてるんだろう。
「あの、」
チェスとわたしの会話を聞いていたエニスが申し訳なさそうに、わたしに声をかけてくる。
「一緒にご飯、食べませんか」
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