「(NYにいたのって結局2日間・・・?)」
列車の窓にもたれながらぼうっと考える。2日とは言っても2日目にこうして移動しているのだからちゃんと数えるなら1日と十数時間だ。・・・随分と短いなあ。確かに、暇かもしれないとはチェスに言ってみたりしていたものの、実際に仕事が入るとなると話は別だ。仕事が早くケリをつけられれば問題ないけれど、そううまくいくかどうか。少しよれてしまった便箋にもう一度目を通す。手紙の内容はこうだった。消してほしい相手が複数いること。場所はNY。すぐにでもにNJに入り、バルトロの元へ向かってほしいということ。
「(ばれても構わない程度にしか書いてないのが面倒ね)」
場所がNYなら、そっちが部下でも寄越して説明させたらいいじゃないの。わざわざNJまで行って戻って来るのが面倒だわ。そして手紙の最後の一文に、いつもの倍の報酬をくれてやる、と書いてあった。わーお。随分と気前がいいのね。それほど潰したい相手なのかしら。でも、急ぎの仕事なら自分のとこの専属の殺し屋を使えばいいのに。もしかすると使わないのではなく、使えないということなのかもしれない。
ガンドールとの抗争では主にマンハッタンにいる部下しか関与していない。つまり、バルトロ専属の殺し屋は今回出動していない(現に、グスターヴォの元に集められた殺し屋はフリーの殺し屋ばかりだったし)ということは、本来であれば専属の殺し屋たちは今手が空いているはず。そして、今のところガンドール以外と抗争をしているという情報は入ってきてない。その手空きの殺し屋が使えない理由があるのだとしたら、なんだろう。
「裏切り、かしら」
今回のグスターヴォの失態に続いて裏切り者が出たとすれば、さすがのバルトロも動かざるを得ない。今のルノラータが維持できているのはバルトロ本人の統率力があってこそだけど、統率力が良いからといってそのファミリーの構成員すべてが忠誠心に満ちているわけじゃない。グスターヴォがいい例だ。とにかく理由がなんにせよ、今回雇われたことには代わりはない。ならば、ちゃんと仕事をこなすしかないわけで。ガタンガタンと揺れる列車の中で小さくため息をついて、
「見つけないといけないもんね、」
誰に言うでもなくわたしはぽつりと呟いた。
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