馬鹿騒ぎ
24 連絡手段は狐目男
まるで恋仲になる一歩手前に見えた。だって、あのラックとこんなやりとりをしてる女は初めて見たんだ。ふと疑問に思ったから軽く聞いてみただけなのに、双方からなぜか責められた。なんだか面白くなくて、適当に流しすことにする。それにしても珍しいな…。


「ところで、お客ってことはわたしに用事があっていらっしゃったんでしょう?何か御用ですか?」
「あなたにお届け物がありましてね。それの配達人といったところです」
「配達?」

そう言うラックが取り出したのは一通の封筒。真っ白で宛名も何も書かれていない手紙だ。その封筒を目にしたリアの表情が一変する。さっきまで、めんどくさそうにしていた顔が一気に真剣で、そして硬いものへと変わった。

「…どうしてあなたが?」
「今日、向こうのファミリーから使いの者が来ました。その方が、あなたに渡してほしい、と。」
「そうですか」

そう言いながら、ビリビリと封筒の端から開き始める。

「ええ!?ここで開けるんですか?!」

マイザーさんが驚いててリアに問いかけた。

「うん。だって、ガンドールさんに頼む時点で外部に漏れてもいい内容ってことでしょう」

顔色ひとつ変えずに発せられた言葉に、そんなものなのか?、と疑問に思っていると封筒の中から一枚の便箋がでてきた。それを眺めるリアの表情が微妙に変わってゆく。

「うーん……これは…めんどくさいなあ」
「リアは全部めんどくさいでしょ」
「うるさいよチェス」

そして、また唸りながら考え込むリアは、急になにか思いついたようでラックの方に向き直った。

「これってガンドールさんも内容知ってたりするんじゃないですか」
「まあ、深い話は聞いていませんが軽くは」
「そうですよねー。マルティージョのボスにも連絡行ってるんでしょうかね」
「それは先ほど私がしておきましたので大丈夫です」
「まあ、随分と用意がよろしいことで…。それにしてもわざわざわたしに頼むなんてバルトロもグスターヴォの件で頭おかしくなったんじゃないですかね」
「バルトロって、ルノラータ・ファミリーのボスのバルトロ・ルノラータか?!」
「そうそう」
「あなたといい、クレアさんといい…、守秘義務というものを知らないんですか」



ラックがやれやれ、といった顔で驚いている。ルノラータって昨日までガンドールと抗争してたところだろ?昨日まで争っていた相手が今度は何をするつもりなんだ?

「名前出すくらいどうってことないですよ。まあ、密告されたら終わりですけど」



それに、何回か雇われてそれなりに信用は買ってるから平気。そう付け足された言葉こそ危ないじゃないかと思った。

「さて、それじゃあちょっと仕事いってくるよ。チェス、今日買ったもの部屋に入れといてくれる?悪くなるものは食べちゃっていいよ」
「しばらく戻らないの?」
「……どうかな。でもちゃっちゃっと終わらせてくるから。」

そう言って立ち上がったリアは、ふとマイザーさんの顔を見て、ぽつりと呟いた。

「やだもう。そんな顔しないでよ。仕事なんだから」
「……無理はしちゃだめですよ」
「はーい」


リアを送り出すマイザーさんはやっぱりどこか寂しそうで、そして辛そうな顔をしていた。


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