馬鹿騒ぎ
23 はたから見れば
僕が持つと言ったのに、「いいのいいの」と笑って重い方の紙袋をリアは抱えて離さなかった。奪ってやろうと思っても、身長差でそもそも不可能だった。本当に、もっと大人になってから酒を飲むべきだったと考えると、軽い紙袋を抱えながら溜息ばかりついてしまう。



「ただいまー」
「おかえりなさい、ふたりとも。リア、お客ですよ」
「客?」
「どうも。昨日ぶりですね」
「ガンドールさん?」

マイザーがリアに客だなんて言うから、てっきりヤツじゃないかどうか確かめてしまった。その心配は無用だったみたいで、目の前で目を細めて笑うのは見慣れた狐目の男だった。見慣れたと言っても、僕がNYに来てから知り合った人物だから特に大きな関わりがあるでもなく、一対一で話したことも正直あまりなかった。ガンドールが一体何の用があるっていうんだろう。

「最近って昨日の話かよ」
「昨日はいろいろとありましたから、時間が長く感じたんですよ。だから、最近って言っただけです。」

ラックさんの話を聞いたフィーロお兄ちゃんは、ふーんとだけ返事をした。たぶん、あまり納得していない。口は軽く尖らせているし、何よりも眉間に軽く皺が寄っていた。

「・・・昨日のお話でしたら、お断りしますけど」

そう言うリアの顔が、随分とめんどくさそうな顔だったので思わず噴き出しそうになってしまった。こんなに嫌そうなリアの顔はいつぶりだろう。そう思うと笑いそうになってしまう。

「おい、チェス大丈夫かよ」
「う、うん。平気……」
「そんな、すぐに返事をしてほしいわけじゃないと言ったはずですよ。」
「そうですけど、これから先わたしの考えが変わるとは思えないです」
「まあまあ、そう焦らずに。」
「・・・・・・なあ、お前らの話って本当に仕事関係か?」
「フィーロ、いけませんよ」

フィーロお兄ちゃんの言いたいことはよくわかる。この二人の会話はまるで恋の駆け引きをしているように見えるんだ。昨日会ったばっかりみたいなのに随分と急展開だなあ。なんて思いながら、持っていた荷物をカウンターに乗せて、椅子へとよじ登って座った。僕の身長じゃ、頑張らないとこの椅子に座ることはできない。全く不便な体だよ。

「ええ、仕事です。何を考えてるんですかフィーロ」
「そうよ。クレアみたいなこと言わないでよフィーロ」

二人に名指しで責められたフィーロお兄ちゃんは、へいへーい、と言って大人しくなった。この反応的に、普通にお似合いなんじゃないかと思ったりするけど、リアが更に不機嫌になるのは面倒だから黙っておこう。


_23/83
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