アイドルシリーズ

影法師とかくれんぼ
帝光七不思議。それは音楽室のモーツァルトの絵が勝手に動くだとか、体育館でボールが一人でドリブルしてるだとか色々存在する。ただ、それらは全部夜に起こる出来事で、誰も確かめたことなんてない噂でしかなかった。……ハズなんだけど、


「(……どうしよ、見てしまった……!)」


ウワー!もう!どうしようどうしようまさか、わたしが目撃者になるなんて…!くっそう、昨日のテレビ番組収録でホラー特集なんてやったからだよ!きっと何かに取りつかれたんだ!


「(昨日眠れなかったから図書室で寝ようと思ったけど、どうする紗希乃…!昼休みくらい寝ないと放課後の仕事に支障がでる…でも、今すーって!すすすーって幽霊が!)」
「あの、」
「(よりにもよってわたしがいつも昼寝に使ってる一番奥のスペースに入って行ったし……どうしよう、)」
「すみません」
「今寝ないと残りの授業もガン寝しちゃう…!」


つんつん。ん?なに今絶賛悩み中なんだけど!わたしの今日のこれからがかかってる大事な選択の時なんだ、け…ど…?

「どうぞ、ゆっくりお休みください」
「ぎゃあああああ」
「ウルサイです。図書室なんですから静かにしてください」

ゆゆゆゆ幽霊がっ、色のうっすいオバケが!気づいたら目の前にいて、叫んだわたしの口を手でぎゅうぎゅう押してくる。(いやココで叫んだわたしも悪いけど押しすぎだよオバケ!)

「黒子くーん何かあったー?」
「いえ。何でもないです」
「そう。あら吉川さん震えてどうしたの?」
「いっ、いえおかまいなく…!」
「そう?図書室は静かにね〜」
「はい」
「ははははいっ!」

しれっとやってきた司書の先生は目の前のオバケを見ても何も言わない。むしろ当然のように扱っている。って、あれ?黒子くんって言った?

「くろこ…?」
「黒子は僕ですけど」
「クロコッチくんだーー!」

ぴっこーん!頭の中でスイッチ入りました。そうだよクロコッチくんだよ。図書室にいる影のうすいクロコッチくん!いつも寝るだけだから忘れてた!

「その勘にさわる呼び方は一人しか思い浮かびませんけど、もしかしなくてもあなたが吉川さんですか?」
「ぷっ、涼太嫌われてる!そうです吉川紗希乃です。ごめんねクロコッチくん、てっきりオバケかと思っちゃった」
「全く気付かれないことも多いので大丈夫ですよ。ところで、今日は寝なくてもいいんですか?」
「えっ、わたしがココで寝てるの知ってるの…?!」
「僕、図書委員なもので。吉川さんが寝ている時も隣で本の整理とかしてたんですけど」
「まったく気づいてなかった…!」
「いつも気持ち良さげに寝てたのでそうだろうと思いました」


しれっと物言うクロコッチくんは、あんまりイメージとは違うカンジ。影がうっすいのはその通りだけど、涼太と二人でいるのがあんまり想像できないなあ。あ、そっか。


「クロコッチくんは涼太につきまとわれてるんだね!」
「え……?(何がどーなってそうなったんだろう…)」
「それじゃあ、わたしは貴重な睡眠時間をムダにするわけにはいかないので寝るね!後で起こして!一緒に教室棟までもどろ!」


クロコッチくんの返事を聞かずにわたしは定位置に向かって睡眠体制に入ることにした。よし、これからは影の薄い目覚まし時計と友達になったからもっと寝れるかも!





:::::::::::::::::::::::::::::



桃井と出会う前のおはなし。桃井と仲良くなってからテツくん呼びになったり。


prev next

bkm
- ナノ -