アイドルシリーズ

真っ赤な貴方はまあるい果実
「っ……なんでこんなことするのかなあ…」


びりびりにページが破かれたノートが一冊。


「わたしの物だからって、何の価値もないのに。せっかく桃ちゃんとお揃いにしたのにー!ご丁寧に名前まで切り取ってくれちゃって!どうせならそっくりそのまま持ち帰りなよ」

全くやんなっちゃうわ。悪意がないからさらに厄介だし。理科室のごみ箱から出てきたのは、わたしのノートだったモノ。今じゃ、書いてたページはどこにもないし、表紙に書いた名前も見つからない。


「それ、怒ってるのかい」
「えっ、うわ!吃驚した!いつからいたの!?」
「ついさっきね。驚いたのは僕の方さ、吉川紗希乃さん?」
「驚いたって…驚かされたのはわたしなんだけど、赤司…えっと、…太郎くん?」
「はは、君はきっと物事を何も考えないんだろうね」
「あれ、馬鹿にされてる?うっそ」
「だって君が受けている行為はいじめと変わらないし、実際に被害を受けているわけだ。それに甘んじて毎度ため息を吐くだけでハイお終い。普通だったら加害者を探すなり、誰かに相談するなり策はあるだろう」
「はあ……あぁそっか。赤司くんは主席だもんね頭いいわけだ」
「君もそこまで馬鹿だとは思っていなかったけどね」
「んー、被害とか加害とかで判断したくないな。許されることではないけど、どちらかというとこれは常識を問われるものだと思う訳ですよ」
「それで?」
「だって普通に考えて人の物を盗っちゃいけないじゃない?それに、壊したりするなんてもっといけないよ。でもそれをいちいち言わないといけないなんてこりごり!一応ね、いじめられているわけでは無くて、芸能人っていうだけで何となーくの憧れとか好意でそういうことになってるんだからさ、こっちは何も言えないよね」
「私物を盗られることを好意で済ませられるなんて君は聖人のつもりかな。僕だったらそれなりの制裁を加えるところだけどね。」
「聖人だなんてとんでもない!わたしはただの中学生だよ。ただ、わたしがどうこう言って治まるものならとっくにしてるってだけ」
「なるほど確かに聖人じゃないね。笑顔を売るアイドルも存外ふつうの人間だったって訳だ」
「?あたりまえじゃない?赤司くんだって頭が良くてバスケが上手いだけの中学生でしょ?」
「はは!僕にそんなこと言う人は初めて会ったよ」
「同じものばかりでつまらなかったね。世の中ってやっぱり広いんだよ。自分と似た人も逆の人もいる。赤司くんとわたしは反対だったってことだね」
「それは随分興味深いね。君なら僕の暇つぶしにはもってこいみたいだ」
「友達になろうって何で素直に言えないの?赤司くんって素直じゃないね」
「ふふっ、他人と比べたら割と素直に会話しているつもりなんだけどな」
「えー?そうなのー?」







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赤との出会い


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