今から矛盾を食べようと思う。


そうして腕をまくって、一体何度完食することがができなかっただろうか。矛盾なんて、腐るほどに転がっている。それを食べきろうとした俺はきっと勇者に違いない。そうだ、とてもとても愚かな勇者だ。


もしかしたら俺の世界が特別腐っているから、俺の視界が矛盾だらけなだけかもしれない。ならば、また俺は腕を捲ってやる。諦めてやるものか。腐ってたまるか。


ただそのなかに誰かと共有している矛盾だって、半分以上あったりする。ナイフとフォークを持ってオシャレに完食を目指したそのときは気付けない。今になって、あれはどうやっても噛みきれない鉄かなにかだとわかった。


という訳で、数学の証明のように組み立てれば、つまりは俺は誰かと視界が重なっていることになる。それがダウトならまた矛盾が生まれるが、俺はこれに是非とも頷いてやろう。


あの頃は気付かなかった。


ずっと誰かと同じ景色を見ているだなんて可能性思いつきもせず、ひたすらに孤独を自分に名付けていた。痛い子だろうとわかっていながら、少なくとも目の前にいるやつよりか俺は大人だと言い張れた。


そんな自分は、本当に本当に痛い子だったのである。大人を自称する大人などみっともない、まだまだガキだという言葉を聞いて、真っ先に浮かんだのは自分だった。誰よりもなにもかも、自分の否もわかっているつもりだったけれど、結局のところなにひとつリンクできていない。そもそも俺の脳みそでは矛盾と嘘が段々色を似てきてしまってるのだ。
正直、薄々とそのことにも気付いていた。だから早く大人になりたいとどんなに願っただろうか。やっぱり俺はガキンチョで、つまらないジェラシーも止められない。


その願いは、言い方を捻くれさせれば、矛盾へと化した。世間一般で大人と呼ばれる俺は、子供に戻りたいと願った。否、子供に戻りたいというより、子供の純情が羨ましい。純情があったかどうかはさて置き。


こんな矛盾とは言い難いものより、もっと噛み砕きたい矛盾を俺は持っている。それはあいつだった。あいつが絡むと、全てが矛盾していく。だから俺にとってはあいつが矛盾なのだ、違いない。


だから俺はあいつを食べることにした。今決めた。


そう言うとあいつは、そんなに戻りたいのかと悲しげな目をした。


どうやら、食べでも構わないらしい。でもいつの間にかやらフォークやらナイフやらは落としてきてしまったようで、素手しか手段はないようだ。犬食いはさすがにはしたない。


俺は聞いたことのある問いかけに、呆れて答えてやった。


「後悔はしてるぜ。でも間違ってたとは思わない」


目の前のあいつは、満足げに微笑んだ。
…ああ、これも一番問題な矛盾に違いないだろう。


いますぐ、その愛しくてたまらない心臓に触れさせてくれないだろうか。
食べたりなんかするもんか。だから、な。こんくらいの矛盾、許せよ。
昔はこんな小さなことが許せなかった自分を、お前はもう許してくれた。そんなお前が、大嫌いでも愛しくてたまらなくなっていたんだ。


簡単に差し出された心臓に口づけてみて、そっとあいつに返すと、不思議なくらい矛盾などどうでもよくなってしまっていた。


「すきだ、」




とても思いつき…
誰か人物が想像できたでしょうか〜
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