約束とは本当に呆気ないものだと思う。


小学校にあがる頃に結婚を誓った幼馴染みの彼は今や苦手な部類にあるし、高学年になってからルームシェアをしようと小指を絡めた彼女とはめっきり会話さえ交わさない。


どちらも何が起こったといい訳でもなくきっかけと呼べるものはなにひとつなくて、呼吸する度二酸化炭素と共に少しずつ体内から消えていくようだった。それはあまりにも然り気無く日常で行われて、ふとしたときに、ああそういうば、と思い出す。既にそのときには、あの頃の夏の匂いとかくすぐったい気持ちだとかは褪せて、ただ言葉だけが頭の片隅にこびりついて離れない。


名残惜しくなんてないけど、少し、寂しくなったりする。あの頃の彼は、彼女は、どこかなぁ。ちょっとした気紛れなどではなく確かな意志で面影を探してみても、指先にはなにも触れない。ただ冷たい風がひゅっと横切るだけだった。取り戻したい訳ではなかった、これは確信だ。


それでも、何度も指先を伸ばして宙をかきむしった。無意識なのか、わからない。たまになにかが掠めても、すぐに手を引っ込めて、わらった。きっとどうでもよかった、約束なんてもの。変わってしまう彼と彼女を引き留めたかった、行かないで欲しかった、それだけの、ただの我が儘なのだ。


まったく自分は変わりたいと思って毎日過ごしているのに、周りには変わらないほしいだなんて、どうかしてる。そのくせ置いてきぼりな私は、あの頃となにが変わっただろう。こんなにくよくよと無駄に言葉を羅列しる思春期の心か。なるほどそれは頷ける。


自分が思っていることは他人も思っているというもので、もしかしたら第三者からすれば私は変わったと、行かないでほしいと、密かにすがり付かれているのかもしれない。ああもうなにからなにまで自意識過剰な上被害妄想だ。
この引っ込めた臆病な手のひらを、強引に引っ張りあげて欲しいだなんて、図々しいにも程がある。


ああ、ほんの少しで構わないの。どうか、あなたのなかに、私を置いてください。
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