目の奥が焼けるようにじゅくりと痛んだ。
たったひとつの瞬きで透明な膜は決壊して、目尻から熱が零れて落ちる。ぼやけた視界に映る真っ赤な花は一層美しく思えた。いつまでも私のなかに根付いていそうな力強い赤、されど相対して儚くも見える。頬を伝って重力のまま落ちていく粒は、最初から決まっていたみたいに、ぽつり、と花弁に着地した。まるで朝露の真似事。やがてふるふる震えると、真っ逆様に地面に落ちていった。私の汚い涙越しだって、花は燃えるような赤色を絶やさなかった。
私はまだこんな泣けたのか、捨てたもんじゃないな。へらり、とひとり笑う。ああ気味悪い。なんて吐き捨てて。そして涙も拭わずに頬に跡がつくくらい泣いてやろうと思った。つまり私は投げやりになっていて、今だったらこの真っ赤な花をぎたぎたに切り刻んでしまえそうなのだ。なんて、なんて悲しい見栄っ張りなんだか。
「食べちゃいたい……」
ふ、と頭を過ぎるだけでなく空中に零れた言葉に背筋がぞっとした。白くなった息が、ありありと口にした事実を知らせている。ああ、汚い、汚い、なんて汚いの。この手は。
「美味しいだろうな」
独占欲にまみれた手のひらを、どうかすくいあげてだなんて言わないから、見ぬふりをして。私には悲しいのがお似合いなのだ。もっと、残酷なくらいの悲しみをちょうだい。