怖い。無言の圧力ってこういうことを言うのか、とか呑気に考えてる場合じゃない。怖いです。
「………あの…ミストレさん…」
 恐る恐る名を呼んでみても返事はなかった。ただものすごい冷やかな目で見られてるだけで。視線を合わせたら負けだと思ったから、ひたすら下を向いて合わせないようにする。沈黙。気まずい。神経が擦り切れる。
「…ねえ、オレさぁ…嫌だって言ったよね?」
 冷めた声で呟かれ、怖すぎてぞっとする。殴るか蹴るかしてくれた方がまだ良かった。こうやって変に冷静になっている時のミストレは異様なまでに恐ろしく、俺も強く出れない。多分、いつも見ないからだろうけど。
 でも俺が羽目を外すと大抵翌日の朝はこの状況になる。こいつだって昨夜はそんな素振りを全く見せなかったくせに、次の日になると我に返るからか高確率でキレるんだ。だからこの空気が珍しいわけじゃないんだけど、それでもここまで張り詰めているのは初めてかもしれない。
「わかってるの?合意の上じゃないってつまり強姦だよ?犯罪だよ?」
 いやほとんど合意の上だったろ、なんて言ったら確実に殺される。大人しく口を噤むけど、でもまぁ言いたいことは結構あった。まず強姦とか言われるほどのことをやった覚えはない。ただちょっとだけ、ほんの少しだけ、いつもと違うことをやってみただけで。
「……それについては謝る。けど、お前だって普通によがって」
「え?」
「なんでもないです」


まずい空気






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