きょろきょろと辺りを見回して、誰もこっちに気付いていないことを確認する。こんなこと、普段は公衆の面前でなんて絶対にやらない。他の人間に目撃でもされたらオレは一生分の後悔を背負わなければならないし、理不尽とか言われようともこいつを殴る自信がある。大体周りに非公認の仲なんだから、人前でできるわけがないだろう。
 でもまぁ、たまには良いかもしれないと思う気持ちもあるわけで。
 よし、誰も見てない。ここは闘技場で人もまばらに居るから、上手いこと隠さないと丸見えだ。柱の陰に身を潜めて隣に立つエスカバの方に目をやる。こいつはさっきから目の前で繰り広げられている戦闘演習を真剣に見ているだけで、正直つまんない。このオレがわざわざ隣に居てやってんのに何も言ってこないし何もしてこないし。むかつく。というわけでオレから仕掛けてあげようと思って今に至るわけだ。
「こっち向いて」
 軍服を軽く引っ張って端的にそう告げる。エスカバがオレの言った通りこっちを見ると同時に、その首に腕を絡めた。少し驚いたような顔をされる。
「え、…何?」
「なんでもないよ」
 おどけるように笑いながら口付けると、予想外の出来事だったらしくエスカバは目を見開いた。腕を回す時点でキスされるってわかんないのかなあ。反応がおもしろくてもう一度同じことをしようとしたけど、両肩を押し戻して、ぐい、と離される。あはは、顔真っ赤。
「お前なぁ…っ」
「なに、もっとしてほしい?」
「あほか…」
 嘘、ほんとは嬉しいくせに。演習なんて抜け出したいなと思ったけど、それは多分こいつが許さないだろう。なんだかんだ真面目だからね、エスカバは。それにこれ以上は人が多すぎて無理だし。誰も居ないとこならもっとしてあげてもいいよ?そう笑って言うと、エスカバは視線を逸らしながら溜息をついた。


物陰で






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