かつら祭2014 | ナノ
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桂祭2014参加作品
※現パロ
右手に持った紙コップのコーヒーの水面が小さな雫を跳ね返し始めた
慌てて私は雨雲で薄暗くなった公園から早足で向かいの通りの軒先を目指す
梅雨の晴れ間ーなんて嘘ばっか!最近の天気予報外れすぎだし。
お邪魔した軒先、大きなガラス窓に映る自分を見ながら腕の雨粒を叩いていると、視界に人影が…
「あちゃー降って来ちまったか!」
大きな独り言を呟いて(叫んで?)、声の主はまた建物へと消えていく
私の目的地も同じだったので、大きな声のお兄さんに続いて扉をくぐった
「こごろー、傘かしてくれ!」
「おや、降ってきたのかい。さっきまで晴れていたのにねぇ。」
「ほんと、たまんねぇよ!」
通りに面した窓を振り返る大きな声のお兄さんと目が合った
「こごろー、タオルも。」
「はい、傘。タオル?ちょっと待って。」
傘を手にやってきたもうひとりのお兄さんは、ヒョイとカウンターの裏からタオルを取り出して傘と一緒に大きな声のお兄さんに差し出した
「ほれ。」
「!…ありがとうございます!」
突然頭にかけられたタオルに驚いた
「おや?」
大きな声のお兄さんの肩越しに、驚いた表情の彼の顔
大きな声のお兄さんに隠れて、私に気付いていなかったようだ
「晋作、言ってくれよ。もっといいタオルを用意したじゃないか。」
「ちょ、俺との扱いの差酷くないか!?」
「彼女はここの常連様だから。ほら、こっちに座って。冷えるといけないからね。」
「うっわ、俺もじゃね!?んま、いいや。傘借りてくぞー」
大きな声のお兄さんは、タオルごと私の頭をグシャグシャと撫でた
「え、ちょ…何するんですかっ」
タオルを取って振り返ると既にお兄さんの姿は無く、大きな窓ごしに、ヒラヒラと手を振るのがチラリと見えた
「騒がしくてすまなかったね。えっと、とりあえずおかわりだね?」
「あ、はい。」
そうだ。ここに来た本来の目的を忘れていた。
間もなくして、芳ばしいコーヒーの香りが漂ってくる
ここは公園に面した喫茶店
周りはチラホラとオフィスが立ち並んでいて、ランチタイムは少し混み合うけど、それ以外はゆったりと過ごせる
私は、公園のベンチでテイクアウトしたコーヒーを飲みながら参考書を広げるのが日課で…信じた天気予報に裏切られ、テイクアウトのコーヒーはおじゃんになり、雨宿りとコーヒーのおかわりのためお店に戻ってきたわけだ
だいたい乾いた髪を手櫛でとかしていると、お盆を手にした彼がやってきた
このお店の店長さん、桂さんだ
「今はお客さんいないから静かでしょ?騒がしやつが来て、他のお客さん帰っちゃったんだ。」
「あぁ、さっきの。」
「古くからの友人で、高杉というんだけど。よくここにも来るんだけどね。まったく、あれがくると嵐のようだよ。」
「初めてお見かけしました。」
「君はだいたい特等席にいるからね。」
ニッコリと微笑んで、桂さんは窓の外を眺める。
公園に面した窓から、噴水が見える。
その手前にある木のベンチで、私は日課をこなしているのだ。
残念なことに、噴水は薄暗く曇った空に同化し、ベンチの座面はずぶ濡れである。
「雨が止んでも戻れそうにないね。今日はここで勉強していったら?」
コーヒーカップをテーブルに並べ、かわりに広げてあったメニューや私の使わない砂糖やミルクを下げて、テーブルをひろくしてくれた。
「ごゆっくり。」
「ありがとうございます。」
参考書を広げ、カップに口をつける
渋くて深い香りが鼻を抜け、集中力が高まる!
…はず、なんだけど。
残念なことに私は全く集中できないまま参考書の文字を指でなぞるだけ
視線はチラチラとカウンターへ向かってしまう
豆を慎重に吟味してミルで挽く桂さんの姿…
接客中は穏やかな表情
お店や商品に対しては厳しい表情
お客さんに出すコーヒーを淹れる時は厳しいけど、優しい目をしてる桂さん…
最初の頃は、店内でコーヒーを飲んでいた私…
そんな桂さんの表情を見ているのが楽しくて楽しくて…
と思い出に浸っていると、湯気の向こうの桂さんとバッチリ目が合って
バッ!
凄い勢いで逸らしてしまった…
どうしよう…変テコな失礼な娘って思ってるよね。
そう、特等席なんていい響きで言われてるけど、実際には桂さんに見とれて何も出来なくなるから逃げてるだけだったりする…
「ごめんね。ついつい、お代わりとか空調とか気にして、お客さんを観察しちゃうもので…」
「い、いえ。とんでもないですっ!」
あぁ、桂さんに気をつかわせてしまってる…。
「気になっちゃうよね。そういうのが嫌だから、君はあまりここに居てくれないんだよね?」
へ?
しゅんと肩を落とす仕草を見せる桂さん
違う。違うの…!
私が勝手に意識して逃げてるだけなんです!
あぁ…桂さんになんて失礼なことを…っ
「ご、ごちそうさまでした!」
「あ、待って、傘持って行って」
私は桂さんの静止を振り切り、急いでお店を出た
雨は弱まることなく降り続いていて、私は泥水も気にせず、公園を突っ切って走った
いつものベンチと噴水を横目に私は走り続けた
もうお店に行くのはやめようかな。
恥ずかしいよ…。
脳裏に浮かぶ、少し悲しげな桂さん
ドンッ!
「イテッ」
「きゃ、すみません!」
全然前を見ていなかった私は派手に通行人にぶつかってしまった
「あ!お前さっきの!」
「あ!えっと…高杉さん?」
「おぉ、俺のこと知ってるのか〜!」
高杉さんはさり気なく傘を私の方に傾けてくれた
「桂さんにうかがいました。お友達なんですね。」
「おうよ!俺もお前のこと知ってるぜ!」
「な、さっき会ったとこじゃないですか。」
「こごろーが毎日毎日窓の外眺めてはぼやいてるぜ。暑くないかな、寒くないかな、おかわりはまだかなーって。俺、一回様子見に行かされたことあるんだからな!」
「そ、そんな…そこまで…」
「そーそー!店に来たら来たで気になってしょーがねーみたいだし…ってやべ…喋り過ぎ」
桂さん…。
私と一緒じゃないか…。
雨で冷えた体が一気に温かくなってきた
気がつくと雨は上がって、雲にできた切れ目からは柔らかく陽が差してきた
「お!悪いがこれ、こごろーに返してきてくれないか?」
高杉さんは先ほど桂さんに借りていた傘を私に差し出した
「頼んだぞ!」
さっきと同じように、私の髪をぐしゃぐしゃ撫でて、高杉さんは去って行った
「ありがとうございます!」
高杉さんは振り返らずに手を振った
もと来た道を引き返し、公園に入ったところで、私は気づいた
噴水の向こう、あのベンチにシートをひき、カップを並べる桂さんの姿に
私は走り出した
楽しいお茶会のはじまりはじまり
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桂さん、お誕生日おめでとうございます!
カツラバックスやらかしてからどうしてもカフェがしたかったので・・・
大遅刻すみませんでした。
主催のカツラー幹部の皆さま、見てくださった皆さまに感謝^^
プチ感想☆