気になるあの子はもてもてで困る・・・! | ナノ
 






カッ、カッカッ…




路地裏にヒールの音が高く響く

小走りで目指すのは、この先に見える赤い扉


勢いよく開くと、中から漏れる温かな光

同時に鳴り響く軽快なドアベルの音

それだけのことだけど、まるで別世界に来たような気分にさせてくれる


岡田くんに上着を預けて、カウンターに向かう

「おう!今日は仕事遅かったんだな!」

「…飲み会だったの。」

「そうか!お前、走って来たのか?」

「え、なんで?」

「息上がってんぞ。そんなに俺に会いたかったのかー仕方ないなそれじゃ!」

「…そうかも。」

「!」

「…何か?」

「いや、思いっきり否定されるつもりの渾身のジョークだったんだが…」

「ちょっとヤなことがあって。」

「そうかそうか、俺が聞いてやろう。何飲む?何か食うか?」

「お酒はお任せします。さっぱりした炭酸系がいいな。あとはー…おにぎりとかありましたっけ?」

「かしこまりました。こごろー!オーダー!俺にぎりー!」

奥の厨房から、桂さんが顔をのぞかせる

「やぁ、来てたんだね。教えておくれよ、晋作。」

「すまんすまん!小娘が、俺に会うために走って来てくれたらしくてな、嬉しくて、つい!」
「あー、はいはい。」

軽く流すな、桂さん…さすがだ…

「おにぎりなんだけどね、お試しで焼俺にぎりもやってるんだ。よかったら、どうかな?」

「是非、それで!」

さっきから香ばしい香りがしていたのはそれか!

「ちょっと待っててね。」

美味しそう!おなかすいたー飲み会だったけど、全然食べられなかったんだよね…

「なんだ、お前。飲み会だったくせに腹減ってんのか?」



そう。ここで先ほどの話に戻る…


今日は会社内の部署を越えての懇親会。

春の人事異動期が一段落し、新しいメンバーでの公式の会合は今夜が初めて。

そこで一騒動あったわけで…


「今日初めて話した人に、付き合ってって言われたの。」

ガシャーン


「ぬぁっ!小五郎ー!?大丈夫かぁぁああ!?」

「あ、あぁ大丈夫だよははは…はい、妬き俺にぎりお待たせ…」

「お前なに妬いてんだ…」

「か、かつらさん、ち、出てますよ!!」

「あ、すまない…ははははは…」

「ばんそーこーあったはず…!あ、荷物クロークだ…」

「ゴッホン!」

「お!大久保さん!」

の手には救急箱…

「桂くん、お客様に何てものを見せてるんだい。ほぅら、こっちにくるんだ!」

「失礼しました。ゆっくりしていってね。ててて…優しくして下さいよー…」

漫画みたいに大久保さんに耳を引っ張られて退場した桂さん…大丈夫だろうか。


「何か、悪かったな!食え食え!」

「はい。…あ、外はさっくりしててなかはホクホク。おいしーい!」

「だろ!」

「はぁ、なんか落ち着きました。」



晋作さんのお酒に口をつけながら、今日あったことをぽつりぽつりと話しはじめた私


晋作さんは、お仕事の手を止めて聞いてくれた




この春、本社から転勤してきた若い男の子がいて

私と違うテーブルだったけど、途中から席替えして話し始めて。


『前から、小娘さんのこと気になってたんです!今日お話できて間違いないってわかりました!』

『俺と付き合って下さい!!』

まわりの女子が騒ぎ出したけど、最初の方、私は案外落ち着いていたのだ

冗談だろうし

全く、若いって困るのよ…(笑)

みたいな軽い感じで受け流してたんだけど。

『お気持ちは嬉しいけど、私そういうのはちょっと…』

『は!彼氏とかいる感じですか!』

『いえ、いないですけど…』

『じゃぁ、前向きに検討を!』

って感じのやり取りがずっと続いたわけで…

「そこはな、彼氏いますーんもぅラブラブでーぇ貴様などアウトオブ眼中!と、言うところだろう。」

いつのまにやら大久保さん出現…

「いや、嘘ついても後でややこしくなるだけじゃないですか。」

てか今の声色は…聞かなかったことにしよう…

「フン、小娘ごときがいっちょ前な口を…なんなら彼氏っての嘘じゃなくて本当にしてやろうか、この私がな!!」

「はいはい、大久保さんワイン庫で頭冷やしましょうね。」

今度は大久保さんが桂さんに連れられて退場…


どうしよう。

結局、一次会が終わる頃にも収まらなくて、振り切って逃げてきたみたいになっちゃったんだよね…

すごく失礼なことしたんじゃ…

「謝っといたほうが、いいかな…」

「ばっ、あほか!やめとけ!」

「げ。岡田くん、聞いてたの!?」

「……当たり前だろ、心配かけさすな…」

「ん?なんて?聞こえなかった…」

「っ…!あほ!」

「あ、どっか行っちゃった…」

「ハハハッ!大久保さんも岡田もあいつらなりに心配してるんだ。…ほら、もう1人」

「え?」


バターン!

「小娘さーーーん!」

晋作さんが言った瞬間、勢いよく開いたドアから入ってきたのは

「武市さん!?」

「はぁーっ…よかった、やっぱりここにいた…」

「どうして…?」

「たまたま仕事帰りに小娘さんを見かけてね、声かけようとしたら誰かにしつこく誘われてるみたいで、突然走って行っちゃったから、探しまわってたんだ。」

「私ってば、すみません…武市さんにまでご迷惑を…」

「で、あれは何なの?」

私の隣に腰掛けながら、武市さんが問いかける

眼光が、なんかやばい…!

「いや、悪い人じゃないんですよ!ほんとに!」

「わかっているよ。」

「私がしっかりしてないから、いけないんです。」

「気をつけなさい。」

「そうだぞ、わざわざ走って追いかけてくるやつにも気をつけろよ。」

「オーナー、誰のことだい?まったく…生ひとつ。こんなに走ったのは久々だよ。」

「ほんとに、すみませんでした!」

「お前は悪いことしてないし、謝るな!はい、生。」

「ありがとう。…ぷは、確かに悪い奴ではなさそうだけど、ね。」

武市さんの手には何故か「彼」の名刺が…

「ふふ…気になるかい?ちょっと商談を持ちかけてみたんだけれど。」

「ななな、なんてことを…!」

「さすがです!武市先輩…!!」

遠くから拍手を送る岡田くん…

「宣戦布告、ってやつかな。あ、仕事の話だよ?」

やだもうこの人こわい。

「何かあったら会社での私の立場どうしてくれるんですかー」

「心配ないよ、僕のところに永久就しょ
「あ!やき俺にぎり冷めたんじゃないか!?ちょっと貸してみろ!」

食べかけのまま冷めてしまった焼き俺にぎりは晋作さんに下げられてしまった

厨房に引っ込んでしまった晋作さんの後ろ姿だけが見えて、何がどうなってるかわからない…


「はい、お待たせ!今度こそ冷めないうちにお上がり!」

晋作さんに手渡されたのはお椀で

透明の出汁に浸った焼き俺にぎり…!

お茶漬け?

あ、鶏の出汁に焼き俺にぎりが入ってる

よりふわふわ感の増したご飯粒

かりかりのお焦げ部分はそのままでおいしい!

一気にかきこんでほおばる私を見て、ニカッと笑ったオーナー


「小五郎のパクりみたいだけど、俺だって相当妬いてんだぞ!」











おわれw

焼き鳥やさんのお茶漬け大好物なのです!

俺にぎりにしようと思ったのですが、色々アレンジが効きすぎてこんな結果に。。

とにかくBARのみんなに愛されまくりな小娘たんが伝われば・・・!

「彼」はへーすけのつもりで書いてましたが、個人的に温めているホストネタがあるのでモブにした


本番はイラストなので!

29日のお祝いまでにはうpしまーす!

ここまで読んで下さって感謝です!!













プチ感想☆



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