いたいよだいぶいたいよ | ナノ
 



死に場所を探してた。


あてもなく訪れた屋上。

朝の校舎は、ひどく静かで、世界に僕1人だけみたいに感じる。


それは、錯覚で、
僕1人がいないところで、この世界は終わったりしない。


上履きを揃えて、フェンスを越える


深く深呼吸


特に、頭をよぎる思い出も無いな。


中庭から響く声がする。

「カナちゃん、お誕生日おめでとう!」

「ありがとーう!きゃー!めっちゃ可愛いこのケーキ!」

「えへへー。教えて貰ったの。」

「誰に?」

「えっとね。確か隣のクラスの…お…お?」

「岡田?」

「違う違う。えっとー、沖田くん!」

「誰?いたっけ…」


ドクン



心臓が鳴った

まだ動いてる

まだ死んでない

死ねない



死にたくない…?













ケーキ屋のショウウィンドウとにらめっこする彼女は、僕と同じ学校の制服を着ていた。

僕は私服で、彼女の後ろに並ぶ。

こんな遅い時間まで、部活かな?

「わわっ、ごめんなさい!どうぞ、お先に。」

「どうも。」

会計を済ましても、まだ彼女は悩んでいた。

「探し物ですか?」

「はい、友達のバースデーケーキを。」

「…これ。美味しいですよ。大きく見えるけど2人で食べるなら、ちょうどかと。あと学校に持って行くならパイとかのほうがいいかもしれないですね。これとかもオススメです。」

「わぁ、可愛い!参考にしますね。ありがとうございます!」







ちゃんと決められたんですね。







「ねぇ、カナちゃん、今日からココでご飯食べない?」

「いいね!」







その会話が

僕をこの世界に引き止めた。






毎日、昼休みに中庭で繰り広げられる、他愛の無い会話






「また明日もここでね。」




僕に言われてる訳じゃないのに、

自然と次の日も、屋上に向かっていた。




明日が待ち遠しく感じたのは、人生で初めてだ。



僕の居場所を、やっと見つけたような、錯覚をしていた。




それも、今日

5月30日で

終わる。


明日から、彼女はもう来ない。



駅前のケーキバイキング、行きたいんだ。

僕なら…、

いや、僕はもういなくなるし…


て、


やばい!


思わず身を乗り出したら、彼女と目が合った気がする。


どうしよう。


まさか、彼女、ここへ来たりしないだろうな…


今、飛ぶしか…


僕は汚い、


消えたい、いなくなりたい、

そう思いながら、

彼女を追い求める日々。


ドクン…


また


また、呼んだ


誰も、呼ばない

僕の名前を。


その声が、


僕をこの世界に縛りつけるんだ。


「沖田君!」




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