おたのしみはこれから | ナノ
「とってもよく似合うよ。」
「ありがとうございます。桂さん、ほんと何でもできるんですねーセットまでしちゃうとか凄い!あ、お花もありがとうございます。もしかして手作りですか?」
「手作りだよ。彼の、ね。」
「え、以蔵?」
「オーナー命令だ。」
「ドレスとか髪飾りとか準備しなきゃクビだったらしいよ?」
以蔵、色んなとこでクビがかかってたんだね…!
「お前の友達が、ほとんど決めた。俺は作っただけだ。」
あ、やっぱカナちゃんもグルだったんだ…
明らか、貸してくれたこの服、おかしいもんね…!
そうだ、確認しなきゃ。
「今日って、BARの開店一周年パーティーですよね?」
「ん?そうだよ。」
「なんか、私の格好、変じゃないですか?」
「いいや、とっても似合ってるよ、花嫁さん。」
「あぅ、桂さんそんな素敵なスマイルで褒めないで…て、花嫁!?」
「お前、なんでまだわかってないんだ!」
う、めっちゃ怒られた!
「え、あの?えーー!?」
「今日は、晋作'SBARの一周年と、中岡君夫妻の結婚ほぼ一周年おめでとう遅くなってごめんねパーティーらしい、晋作いわく。」
「へ、へぇーー!?」
なんと、そんなことになってたのか!
「わ、私らただのお客なのに、そんなにしてもらうの悪いですよ…」
「何を言ってるんだい。この店で誕生した夫婦だろう、君たちは。」
「そうなのか?!」
「ふふ、岡田君にも見せてあげたかったよ。あの中岡君の熱烈プロポーズ。」
あれ?なんか桂さん面白がってるよね…!
「も、もうあれから一年なんですね。お店も順調みたいで、よかったです!」
「ありがとう。店が潰れなかったおかげで、こんな綺麗な花嫁さんが拝めて光栄だよ。」
「なんか自虐的な…」
「晋作が無茶苦茶するからね、毎日気が気でないよ。」
「お察しします…」
ドタドタバタバタ…
噂をすれば…
「できたかー!!??」
うるさっ…!
「おおおっ!よく似合うじゃないか!さすが、俺の女!」
「晋作、もう冗談じゃ済まないからね。中岡君の奥様だよ。」
「う、小五郎の視線が本気で冷たい…!」
「晋作さん、私達のために、ありがとうございます。せっかくのお店のパーティーなのに」
「せっかくの店のパーティーだから、に決まってんだろ!こんなめでたいことねぇよなー!」
「晋作さん…」
「てか、お前ら、あれから俺に挨拶もなしに行っちまったんだから、今日は俺の好きにさせろよ!」
「う…。その節はたいへん…」
「堅苦しいのは無しだよ。さぁ晋作、エスコートして差し上げて。」
「よっしゃ、来い!みんな待ってる!」
「へ?きゃ、晋作さん!」
ぐいっ、と私をひっぱる晋作さん。
なれないドレスの裾が、引っかかってこけるー!
「わ!すまん!ここ狭いしな!よっしょ!」
「ひぇー!」
なぜか晋作さんにお姫様抱っこされたまま、ホールへ連れて行かれる私…
か、桂さんの目が本気お怒りモードだ!晋作さん、察して…!
内緒にしててゴメンな、と晋作さんに言われてちょっと調子が狂う。
そっか、慎ちゃんも知ってたのかー。
「なぁ、今更だがこっちのしんちゃんの嫁になる気は」
「ないですね。てか、晋作さん、顔近い。」
「う、言い切る前に即答かい。しかも、冷たい!」
厨房からホールへ抜ける出口に、慎ちゃんを発見!
晋作さんにお姫様抱っこされてる私を見て、むっちゃビックリしてる!そりゃね…。
「び、ビビったッス!姉さん、本っ当にキレイッス!」
あれ、そっち?
嬉しいんだけど。
ねぇ、慎ちゃん、この状況へのツッコミは?
「中岡にはもったいねーな!ほれっ!」
へ?
宙に浮く私の体。
何が起こったのか理解するよりも早く、力強く抱き留められる。
「ちょ、高杉先輩何考えてるんスか!?」
「ナイスキャーッチ!」
え、ちょ、投げられたの私!?信じられない!
「慎ちゃん、ごめんね重いでしょ!早く下ろして!」
「ん?平気ッス。このまま入場しちゃいましょう。」
慎ちゃん…こんなに力持ちだったんだ…
知らなかったな。
まだまだ知らない慎ちゃんの色んな面があるんだろうな。
結婚して1年経つのに…
いや、1年経ったからか。
これからも、もっと、もっと、慎ちゃんの素敵な所、見つけていけるかな!
2人で、世界一幸せになろうね?
「姉さん、見つめすぎッス。照れるッス。」
「えへへー。慎ちゃん、大好き!」
「うぉっ、くそぉっ。日本のしんちゃんが恋しくなったらいつでも帰って来いよ!」
そう言って晋作さんが伸ばした右手は、一瞬止まって、慎ちゃんの肩へ。
今、絶対髪グシャグシャしようとしたよね!
せっかく桂さんがセットしてくれたんだから、今日はほんとに許さない!
思わず睨んでしまって、苦笑いの晋作さん…
「ア、ハハッ、よっしゃ中岡、ビシッと決めてこい!」
バシバシと慎ちゃんの肩を叩いて、ホールへ向かう晋作さん。
「静粛にー!って、コラ坂本まだ飲むな!武市、この世の終わりのような顔をするな!大久保さん、アンタなに客席で和んでんだコッチ来い!」
みんな相変わらずだな…
楽しい楽しい、パーティーの始まり!