1-2 | ナノ
一年のたまりにたまった汚れをスッキリさせなきゃ、年がこせないよね!
と、はりきって縁側の網戸を外すと…
ぱたぱたとはたきでお掃除する、半平太兄ちゃんがいて、びっくり。
急に網戸がなくなったのに驚いたのか、網戸を抱えてぽかんとする妹の顔が滑稽だったのか、多分私と同じようにぽかんとする半平太兄ちゃん。
「えらいね、お手伝い?」
「うん。ほんとはお節料理の練習なんだけど、桂さん留守みたいで。」
「そういえば、見ないね。」
「だから、以蔵くんの庭掃除のお手伝い!」
「…それは以蔵に任せた方が、いいんじゃない?水も冷たいし、重たいだろう。」
そう言って半平太兄ちゃんは私が抱えていた網戸を奪って庭に横たえた。
「以蔵ー、後よろしくね。」
と言いながら、私に代わって次々と網戸を外して並べていく。
「え!?お、俺がやりますっ…!!」
結構遠くにいたのに以蔵くんはホース片手にすぐにとんできた。
半平太兄ちゃんが並べた網戸に豪快に水を放つ以蔵くん。
「ね、任せよう。ちょうど手伝って欲しかったんだ。上がって。」
「う、うん。」
網戸は以蔵くんに任せよう…
「で、何を手伝えば?」
「この棚の下を掃除したいんだけど、1人じゃ無理そうで。僕が持ち上げるから、その間に下を掃いてくれない?」
「うん、わかった。」
「はい、頭打たないようにね。」
「はーい。」
昔から、些細なことでも私の心配をしてくれる、優しい半平太兄ちゃん。
兄ちゃんがしんどくないように、早く綺麗にしたいけど、なかなか一年分のホコリはとりきれない。
「ふぅー、終わった!」
棚の下から這い出して、半平太兄ちゃんを見上げる。
「……。」
「どうしたの?」
ねこが伸びをするみたいな体勢の私と、それに覆い被さるみたいに棚を支える半平太兄ちゃんは、動かなくなってしまった。
大変、私が遅いから、腰痛くなっちゃったかな…
「上目遣いは…反則…」
「え?」
私が指を挟まないように、手をとって、ゆっくり棚を下ろす半平太兄ちゃん。
さっきまでの距離はそのまま、私の前髪にそっとふれる半平太兄ちゃん。
は、半平太兄ちゃん!?
「ホコリ、ついてる。」
やだ、私ったら。
「ゴッホン!」
「「…!!」」
突然の咳払いに固まる私たち。
部屋の入り口には、利通兄ちゃんの姿が。
「半平太、反則はお前だ。」
そう言うと利通兄ちゃんは私の手をひいて立たせる。
「もう手伝いは終わったろう。今度は俺を手伝え。」
「へ?は、半平太兄ちゃん…」
「ありがとう。助かったよ、いっておいで。」
なんだか半平太兄ちゃん、元気ない。
→次へ