帰還
なんだか藩邸が騒がしい。
晋作さんが叫んでるのは見慣れてるけど、
桂さんも焦ってる様子で、ただ事でないことは容易に想像できました。
なにやら寺田屋に遊びに行った華子ちゃんが、新撰組に追われてるという由々しき事態のようです。
華子ちゃんは、寺田屋のみんなと一緒に逃げているらしいので、みんなを藩邸で匿う準備をしてるみたいです。
早く助けに行くと暴れる晋作さんを止める桂さん…2人も、今出て行くと危ないんだろうな。
悔しそうな2人の顔を見ているうちに、私の体は勝手に走り出していました。
屋根から屋根に飛び移りながら、浅葱色の羽織りを着た人がいない通路をくまなく捜す。
ふと視界の端にキラリと光るものを見つけて飛び降りる。
前に寺田屋で以蔵さんが見せてくれた猫の飾りだった。
見渡すと赤い…血?
全身の毛が逆立つ。
華子ちゃん…
無事でいて…!
猫の飾りをくわえてまた走り出しました。
しばらくすると、華子ちゃんの匂いが…
辿って草村を抜けると、神社の境内にへたり込んで座る華子ちゃんとうずくまる以蔵さん、2人に刃を向ける浅葱色の羽織りを着た隊士が…!
「お前は、帰れ!」「でも、以蔵がっ…」「もといた世界に、帰してやる!」以蔵さんが私を見たような気がしました。
「頼む…」猫の飾りをしっかりとくわえ直して、私は駆けだしました
華子ちゃんを今救えるのは、私だ…
理由はわからないけど、はっきりとした自信がありました。
華子ちゃん!
華子ーっ!
「カナちゃん!」
「カナちゃん。」
タマちゃん、
来ちゃだめーー……