日向ぼっこ
その人は、
太陽。
強くて、眩しい光は
黒くて深い影をつくるのです。
季節は少しうつり、早く夜が訪れる季節になりました。
今日はどこで寝ようかな、と藩邸内をうろうろとしていると、澄んだ冷たい夜の風が三味線の音色を運んできました。
晋作さんだ…
音のする方へ誘われてみたものの、いつもとは違う様子で、近くづくことができませんでした。
晋作さん?
「目指すべき道が見えてきて、俺は少し欲が出てきた。来るべき時代に俺の居場所はない。」
私は晋作さんがみんなにかくれて一人で苦しんでいるのを知ってます。
「欲しくても手に入らないものの為に、尽力できるか、わからなくなってきた。」
たとえあなたがゴール直前にリタイアしても、あなたのバトンは繋がってます。
あなたはひとりで戦ってるわけじゃないですから。
「だな。俺には誇るべき同士が大勢いるしな!」
あれ?
通じました?
振り返った晋作さんはいつも通りの、ニカッとした笑顔でした。
「なんか、お前見てるとひとりで悩んでんのが馬鹿みたいだ。」
そんなこと…
「お前は、落ち込んだり悩んだりしても誰にも伝えられんのに、いつも陽気そうに生きてるな。」
褒められてはなさそうですね…食べて寝たら、スッキリしますけど。
何より、私は晋作さんの明るさに、いつも救われていますよ?
晋作さんは私をひょいと抱えてしまいました。
「あったかいな、お前は小さな体で、しっかり生きてるんだな。」
晋作さんもあったかい。
ちゃんと、生きてますよ。
「生きた長さも何を成したかもいずれ関係なくなる。人間とか、動物とか関係ない存在になるんだ。」
はい。
「むこうで会えたら、俺の嫁にしてやる!」
はい。
…え?
「今日は俺と寝ろ。」
へ?
なにやらいい湯たんぽにされる気がしてならないです…
ね、猫で良かった…
いずれ迎える終焉の日、
あなたのその日溜まりに憩わせてください。