大きくて、いつもよりどこかちっぽけな背中に飛び付いた。
正面から顔と顔とを見合わせてなんて、とてもじゃないけど出来そうにないから。
それでも何かしなければ、縋ってでも引き止めなければ。
 
このままユーリは、私の知っているユーリではなくなってしまう
 
理由なんてないけれど、確かにそう感じて、殆ど衝動的な事だった。
肌が粟立ち嫌な予感が止まらない。
 
このまま夜の闇に融けてしまいそう。
 
 
 
「っもしも…もしも私が、例えば人を殺すとかそんな、」
 
「そんな事、オレがさせねえ。」
 
 
 
振り向きざま、酷く無機質な響きが私の言葉を遮った。
右手がするりと私の腰に回り、そのまますっぽり抱き竦められ、遠くの街灯に淡く当てられた嫌に青白い胸元が視界を覆う。
 
 
 
「でも!ユーリの言う悪党に、もし私がなったら、」
 
「させねえって言ってるだろ。」
 
 
先程よりも語気を強めた言葉が返ってきた。
顔を上げようとすればするほど、ユーリの左手がそれと同じ位強く私の頭を押さえ付ける。
 
 
どんな顔をしているの?
 
ねぇ、ユーリがみえないよ。
 
 
 
 
 
「私も、殺すんでしょう。」
 
 
 
つむじに掛かる、熱い息が揺れていた。
 
今にも泣き出しそうだった。
 
 
 
 
 
in particular −とりわけ/特に−
(微かに右手が震えてた)
 
 
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