痛いくらいに掴まれた腕から、彼のたぎるほど熱い感情がそのまま流れ込むようだった。
 
きっと赤くなっているんだろうな、そんな事を考えている余裕などない状況にも関わらず、案外冷静な自分の図太さに小さく笑みが零れた。
彼の熱さに比例して背中に触れる鈍色の壁は驚くほど冷たい。
捕食される寸前の草食動物も、こんな感じなのだろうか。
 
 
 
「…何、笑ってんだよ」
 
 
 
開口一番に、それだった。
 
他に何か言う事はないのだろうか、例えばどうして突然こんな事をしたのかとか。
直ぐさま浮かんだ言葉を発しようとした刹那、揺れる翡翠の間から垣間見えた灰色の酷く傷心した姿、奥で燃え盛る確かな憤りに、私は口を噤む事しか出来なかった。
 
 
 
「なァ、俺がなんとも思わねェとでも思ってんのか?」
 
 
 
 
灰色の瞳に僅かな蔭りが生まれる。
あっと思えばもう遅い。
鼻と鼻とが触れ合うほど近付いたのと同時に掴まれた腕に益々力が込められた。
まるで身体中を駆け巡る血液がそこで塞き止められるようだ。
先程とは比べものにならないほど私の身体もまた熱を持っている。
 
熱い、熱くて堪らない。
 
 
 
 
 
「だんまりとはイイ度胸じゃねーか。
それともやっぱわざと、だった訳だなアレは。」
 
「違…っ!」
 
 
 
"アレ"というのは恐らく、つい今し方、私がユーリに抱き着いていた事だろう。
それ位しか、スパーダの怒りを買うような身に覚えが無かった。
真実として転びかけた私を助けてくれただけなのだが、この様子を伺い見る限り、どこかで歪んでしまった誤報を耳にしたに違いない。
誤解なのだと訴えようとした唇は、荒々しく彼のそれで塞がれてしまった。
段々と深くなる行為に意識がぼんやりとしてくる。
うるせぇ ちょっとだまってろ、と耳元に落とされた身勝手で矛盾した言葉でさえ酷く甘美な囁きに聴こえてしまう。
 
 
触れ合う部分が溶けるように熱く、私を内側から外側から蝕んでいった。
 
 
 
 
 
 
 
turn off −(電灯・テレビなど)を消す/(水道・ガスなど)を止める−
(そこからは、もう、二人だけの時間)
 
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RM2設定。
 
本当はスパーダ、全部事情知ってます。
若気の至りってやつですな。
男の嫉妬は醜いよ(^O^)/←


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