※死んでます

















 
始まりはなんだっけ。
 
 
大剣を滴る鮮やかな紅を震える指先で掬い取り、口内へ招き入れた瞬間だった。
ほんの僅かな時間ながら昨日までの僕へと変わる、否、戻ったのは。
直ぐさま口いっぱいに広がる金属特有の苦みに味に、全ての神経回路が集中し、もうそんなくだらない考えは何処かへ吹き飛んでしまったけれど。
 
 
ねっとりと舌を刺激する彼女の其れが、僕の唾液とグチャグチャに混ざり合って境界線なんて無くなって、体中に染み渡っていく。
まるで一種の神聖な儀式のように、僕に纏わり付く穢れを洗い流してくれるように感じられた。
消化管が細く絞られこれ以上の侵入を阻み、寧ろ逆に胃液の一滴足りともを残さず吐き出そうと活発な運動を行っているような錯覚を覚えても、放すものかと無理矢理に飲み下す。
 
其れしか知らない幼子のように何度も何度も繰り返した。
何度も何度も。
 
 
浅ましく愚かな行為と知りえていても、最早止める事など到底不可能な話だった。
否、止める気なんてさらさらないのが事実だけれど。
 
 
 
このまま君と一つになれれば良いのに、と何度思った事だろう。
 
飲み込んだ血液とも組織液ともリンパ液とも言える、総称してしまえば所詮体液から、君が僕に溶け込んで一つになってしまえば良いのに。
骨髄までも侵食して、生産される赤血球も白血球も血小板もみんなみんな君色に染まれば良いのに。
君で真っ赤に染まったこの姿みたいに。
 
素敵な考えだとは思わない?
僕は凄く凄く幸せな気分になれると思うよ。
 
今だって身体の至る所から君が、ルカ君ルカ君って叫んでる。
嗚呼、なんて満ち足りた瞬間だろう!
 
 
 
これで私もだよ、って言ってくれたら最高なんだけど、くたりと僕の脚下に横たわるまだ生暖かい其れは、喋る事はおろか動く事さえ不可能だろう。
仕方無いよね、二兎を追う者は一兎を得ずって言うし。
 
 
 
それでもやっぱり、あのキラキラした声がもう二度と聞けないのは、殺伐とした僕の胸にちょっとだけ刺さった。
 
 
 
 
 
 
be full of −いっぱいである−
(幸せってなんだっけ。)
 
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