最悪だ。
 
 
寮を出た時は、雲一つない青空だったというのに。
突然のスコールに、勿論傘なんて気の利いた物は持っておらず大人しく軒先で雨宿り。
 
 
…天気予報、見ておくべきだった。
 
後悔しても後の祭りとはこの事で、肌に張り付くブラウスから徐々に熱が奪われていく。
少しでも其れを防ごうと自身を抱きしめしゃがみ込めば幾らか効果があるように思えた。
相変わらずカタカタと震えるものの、中心がじんわり温かみを持っている。
 
 
と、石畳の地面が一層暗いダークグレーに変わった。
陰が出来たらしい。
ちょこんと端に現れた爪先からゆっくりと辿っていけば、呆れたような困惑したような、複雑な面持ちのラギと紺色の傘が立ちはだかっていた。
 
 
 
「…なにやってんだ、お前。」
 
「見て分かりませんかね。
雨宿りですよ、雨宿り。」
 
「…傘は?」
 
「持ってたらこんな所にこんな体勢でいないってば。」
 
 
 
事実を言っただけというのに大きな溜息を吐かれた。
額に手を当てさも大袈裟に。
 
其れに加えて見下ろされている事が何故だか悔しくって詰め寄るように立ち上がれば、急に真っ赤になって気まずそうに視線を外された。
それから傘を乱暴に押し付けられて、胸の校章を外したかと思えば投げ付けられた指定のコート。
顔面にクリーンヒットした其れのお陰で身体いっぱいに染み渡るお日様の匂い。
ラギの香りに肺から毒されていく。
 
 
 
「な、なにこれいきなり」
 
「…後で返せよ。」
 
「え、貸してくれるの?」
 
 
 
 
そっぽを向いたまま大きく頷くラギは、どこからどう見ても寒そうな格好。
捲った袖から覗く意外と逞しい腕に一つまた一つと水滴が滴る。
 
 
 
「でもなんか悪いよ。
せめて一緒に傘入ろう。」
 
「はあ?なに寝ぼけたこと言ってんだ。
俺が変身しちまうに決まってんだろーが。」
 
「じゃあ傘借りて、コート返す。」
 
「莫迦か、お前。」
 
 
 
 
ちらっと一瞥したかと思えば、今度は完全に背を向けられてしまった。
辛うじて見える耳が髪の毛と同化しそうな色をしているため、照れているのだろうか。
 
それにしても最後の暴言は頂けない。
 
 
 
 
 
「…っ透けてんだっつーの!」
 
 
 
一拍置いて半ば叫ぶようにして走り去ってしまったラギの背中が米粒程の大きさになった時、初めて彼の言った言葉を言葉として理解した。
それまで間抜けにポカンと大口を開けていた様はなんて滑稽だっただろう。
一気に沸点まで達した血液がぐらぐらと煮立っている。
それこそ氷のように冷たかった指先さえ熱い。
 
 
 
 
 
最悪だ。
 
 
…今日の下着、可愛くない。
 
 
 
 



set in −(季節・天候が)始まる−
(嵐の予感。)

 
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しょーもないネタで申し訳ない(^O^)/←
 

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