「リオンー!
これ作ったの、食べて食べて!」
 
差し出された其れは図らずも僕の大好物。
妙に照れ臭くなって口から出た言葉は仕方ないなと感謝の其れではなかった。
 
駄目だ駄目だ。
こんな調子では、いつかだったかマリアンに言われたように嫌われてしまう。
意を決してもう一度彼女の方を見遣れば、瞳に映る無愛想な表情の少年と目があった。
 
 
「ねぇ早く食べてってばー」
 
 
腕をブンブン揺さ振られ、こう急かされては食べない訳にいかない。
フォークを刺し入れ一口大にし、ゆっくり口元へと運ぶ。
 
 
 
 
…この時に気付いていれば良かったんだ。
 
 
 
キラリと光る呼び名!の目に。
妙に大きな弧を描く其の口に。
 
期待と羨望とが入り混じった眼差しを、僕は単に良い意味で味を気にしているだけだとばかり思い込んでいた。
 
それがこんな事になるなんて。
 
 
 
パクリと招き入れた其れは想像以上というか、寧ろ想定外の攻撃的な産物だった。
まず口内を襲ったのは咽せ返るような甘さ。
其れに段々と苦味が混じり始めたかと思えば急に台頭したのは塩辛さ。
畳み掛けるように猛烈な辛さが暴れ回り、これはもう、なんというか僕の知っているモンブランの常識を覆す味だった。
 
それでも折角呼び名!が作ってくれた物だからと吐き出す訳にもいかず、僕には似つかわしくないだろう気合いで飲み込んだ。
 
一体、どんな作り方をすればこんな恐ろしい物体が生み出されるんだと彼女の座っていた椅子へと視線を移せば見る影も無く。
 
 
ここで僕は漸く気付くのだった。
 
嵌められた、と。
 
 
 
 
 
suffer from −苦しむ−
(イタズラ大成功!)
 
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