逆行する歯車
気づいたら、ここにいた。

先ほどまで、あの地獄のような戦場にいたというのに。
目の前で、最愛のあの人を失くしたというのに。

「誰だ、お前は」

ホグワーツの制服(緑のシンボルカラーを身につけているところからすると、スリザリンの生徒だ)が、芝生の上に倒れていたわたしを怪訝そうに見下ろした。なるべくなら関わりたくないが、見つけてしまった手前仕方ない、という表情がありありと浮かんでいる。

しかし、わたしが顔を上げ、いたるところに傷が残っているのをみると、わたしに声をかけた黒髪の男の子はハッと表情を変えた。

彼はわたしに何か声をかけているが、どこか見覚えのある顔だ、と考え始めたわたしにはその言葉は届かなかった。

見覚えがある、という言葉では済まされないほどの、衝撃。

「セブルス・スネイプ教授……」

それは、わたしがはじめて恋した人。
そして、あの戦争の前日、やっと想いが通じた人。

しかし彼は、彼の最愛の人が生んだ子供を守るために二度と手の届かぬ場所へと行ってしまった。
そんな彼が、ずいぶん若返った姿で目の前にいる。

「どうしてわたしの名前を知っている。しかし教授とは、頭を打ったのか。
それより、ひどい怪我だ。医務室に連れて行く。乗れるか」

みるからに怪しいわたしに背中を差し出してくるスネイプ教授。しかしわたしは突然のことに頭がついていかず、呆けたような表情で彼を見上げるだけだ。

いつまでも動かないわたしに焦れたのか、彼は倒れていたわたしを横抱きにして、何も言わずにずんずんと歩き始めた。遠慮のない動きに見えるけれど、わたしに衝撃がいかないように気を使ってくれているのがわかる。

ああ、優しい人だ。どこまでも。

「スネイプ教授、わたしあなたのために生まれたんだわ」

もしこれが神様のくれた最後のチャンスなら、どんなことでもしよう。
彼を取り戻せるならわたしは、今度こそ身を投げ出してしまうだろう。


ハリーよりも年上のグリフィンドール生、セブルスの教え子の主人公。セブルスに長年片想いし、アタックを続けた結果セブルスがほだされて「この戦争が終わったら〜(略)」という約束(ありがちな死亡フラグ)をし、結局セブルスを目の前で失います。セブルスの亡骸を抱きしめそのまま気を失ってしまった主人公は、過去の世界で目覚めます。

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