君がいないと僕は、-Sirius

同じセリフでいろんなキャラクターSS
「君がいないと僕は、不完全のままだ」



w/Sirius Black 親友

シリウス・ブラックは紛れもなく、最高にハンサムでユーモアのある男だ。

グリフィンドールに入って以来、もともとリーマスと幼馴染だったわたしは、シリウスと意気投合し、いたずら仕掛け人の一人としてすぐに彼らの輪に溶け込んだ。彼らと過ごす日々は、驚くほど刺激的で、心を踊らせる――ある日はシリウスと、どちらが多くトイレを爆発させられるかを競った。女子トイレは個室が多いため、僅差でわたしが勝利した。その代わりにトロフィー磨きの数も、シリウスより少しばかり多くあてがわれたのだけれど……。

「シリウス、君のせいで彼女がこんなおてんばになったんだぞ」

リーマスが言う。監督生になった彼は、その立場からわたしたちをたしなめなければならない。相当苦労しているようだ。眉間を指の先でもみながら、「頼むから三日に一度はおとなしくしてくれ」と切実な声を出す。

「リーマス、それは違う。こいつは俺より、いたずら仕掛け人としての素質があったんだ――昨日だって最高にクールな……」

「聞かせないでくれ、知らないままでいたい」

わたしの肩に手を回してそう笑うシリウスに、リーマスは慌てて彼の口を塞いだ。隣にいるジェームズは「リーマス、付き合いが悪いぞ!」とはやし立てる。一番たちが悪い。

「君たちが羨ましいよ……僕はOWLが不安で」そうこぼすのは、ピーターだ。確かに、わたしたちは今年フクロウを控えていた。ピーターはこの中でいちばん成績が下だ。以前からわたしとリーマスで彼と勉強会を開いているものの、わたしは何でも感覚的にやってしまうし、リーマスはリーマスで分かりやすいものの、どこか小難しいためピーターのレベルにまでなかなか合わせられていないのだった。

「案外シリウスやジェームズの方が、教えるのうまかったりしてね」

わたしの言葉にリーマスが「それは……同意しかねる。彼らが黙って図書館の椅子に座っていられるとは到底思わない」というので、わたしは思わずくすりと笑ってしまった。その通りだったからだ。

そんな懐かしい記憶を思い出しては、現実に引き戻されるのを、この十数年間何度も繰り返してきた。けれど、今わたしの目の前には――紛れもなく、シリウス・ブラックその人がいる。大きなヒッポグリフ――バックビークというらしい――を乗りこなした彼は、不敵に笑っていた。「私が恋しかったか?」事の顛末を聞かされたわたしは、思わず、情けないことにぽろぽろと涙をこぼしてしまう。そんなわたしを、昔では想像できないくらい優しく抱きしめたシリウスは、耳元で囁いた。

「私の親友たちは、アズカバンでの私の唯一の希望だった――。君がいないと私は、不完全なままだからな」
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