手向ける
「話にならないわ」

わたしの言葉で、テーブルに緊張が走ったのがわかった。けれどそんなもの、気に留める価値すらない。

「なまえ、友人たちが集う席だ。抑えろ」

テーブルの一番奥に座った彼が言う。その言葉を、はっ、と鼻で笑った。友人。心にもないことを。あなたの可愛い虫けらたちは、与えられるエサへの敏感さだけが取り柄よ。

わたしは尊大な仕草でテーブルを見回した。以前彼に色目を使ったがために延々とクルーシオを浴びせたベラは、視線からすら避けるようにうつむく。他の面々もまた、同じような反応をしている。こちらを見つめ返しているのはセブルスとおバカな狼だけだ。

「わたしはここの臭いに我慢ならないの」

わざとらしく鼻を摘んでみせる。純血ですらない獣たちが、年々このテーブルを満たしつつある。汚らしい狼に顔色を伺うネズミ──。わたしが立ち上がると、何人かが体を揺らしたのがわかった。それらをなぶるように、ゆっくりと“友人”たちの後ろを歩いた。彼に色目を使った女、不相応にもわたしを口説いた男、声をかける勇気もないくせに視線で舐め回す男、彼らの後ろを。

そして、この──唯一わたしにふさわしい男の膝にまたがった。深いスリットから太ももが惜しげもなく晒されるのにも構わずに。

「ねえ、ここから連れ出してちょうだい、もうずいぶんお利口にしていたでしょう。あんまりだわ」

「──ルシウス、その女を始末しておけ」

しばしの沈黙の後、しゅるりとわたしの腰に手が回ったのが合図だった。宙に浮かばされていた“顔馴染み”の女が、どさりとテーブルに落とされる。「なまえ!」悲痛な声だった。「どうしてあなたが、」彼女の今際の言葉が皆まで叫ばれる前に、ルシウスの杖から緑の閃光がほとばしって、彼女は絶命した。わたしは帝王に腰を抱かれたまま、ちらりとセブルスを振り返った。彼の表情はまるで最初の魔法使いが生まれた時からそうだったかのように、ひとつも変わってやしない。つまらない。その黒曜石のような瞳が、ゆっくりとこちらへと向けられた。

「セブルス、ご同僚への弔辞はあなたの役目よ」

「無意味なことを」

冷たく吐き捨てた彼は、わたしに向けていた視線をテーブルの上の冷たい骸に移した。

「お前はセブルスにずいぶんご執心のようだな」

あげつらねるような声で、わたしの男が言う。「そうね」わたしがそう答えた瞬間、腰を抱く手に少し力がこもったような気がして、口角が自然とつり上がった。彼の冷たい手に、そっと手を重ねる。

「何もわかっていないのね、トム」

セブルスを揶揄うことであなたの反応を楽しんでいることも、セブルスがずいぶん長い間わたしたちを裏切っていることも、──わたしにはあなたしかいないことも。

長い廊下の真ん中で、あなたの首に手を回す。「キスして、我が君」彼はわたしを少し見つめた後、望むものをくれる。あなたはいつもそう。

あなたにわからない唯一のものを、わたしはあなたと出会った瞬間に理解したのよ、トム。

わたしにしかわからないことをわたしが見逃したことで、生まれたひずみ、待ち受ける滅び、すべて受け入れるから、いつまでも永遠でいさせて。
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