▼ 拓茜要素あり


「いいなあ」

ぽそりと、小さく呟いたそれは誰かに拾われる事なく空気と同化する。机に俯せた体勢で黒板に睨みを聞かせた。

「……茜ちゃん」

じっとり茜ちゃんを見つめた後、姿勢を整えて机の中から次の時間に必要な教科書とノート、資料集を取り出す。

と、その時ノートに挟んであったプリントがノートの間か滑り落ちた。吸い付けられるようにして、床に落ちたソレ。極自然の摂理なんだと私に訴えてるような気がした。

「……」

無言で席を立つ。机に手を置いて、しゃがみ込みたどたどしくプリントに手をつけた。
なるべくプリントにシワを付けないように、慎重に。

パッパッと埃を払い、そのままプリントを読む。ああ、この間ノートに貼るの忘れてた奴だ。


貼らなきゃなあ、そう思った時、教室に茜ちゃんを呼ぶ声が響いた。


「山菜!」

ピシリと、音を立てて顔が硬直する。聞き間違える訳がない、私が恋焦がれてやまないこれは。

ギギギ、と機械じみた動きで首を動かす。顔を向けた先には、拓人。と、茜ちゃん。

楽しそう。きっと、部活の事だろうな。茜ちゃんマネージャーやってるし。楽しそう。いいな、いいないいないいなあ。楽しそうで、嬉しそうで、幸せそうで、羨ましい。いいなあいいなあいいなあいいなあいいなあいいなあいいなあいいなあいいなあいいなあいいなあいいなあいいなあいいなあいいなあいいなあいいなあいいなあいいなあいいなあいいなあいいなあいいなあいいなあいいなあいいなあ、いいな。

羨ましい、な。

気が付けば、手の中のプリントはシワだらけ。それに首を傾げる。なんでだろう。

「わかりました、ではシン様、また放課後に。」

クシャ

あはは、プリントシワだらけだ。



―――
20120126.ああなんて妬ましい

bgm/ドミノ/びす
 

「#年下攻め」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -