20

薄暗い子ども部屋の春の優しい歌声が響く。
その歌声ですっかり安心したのか優人は、ベビーベットで可愛らしい寝息をたてていた。


「はるちゃ・・・。」
春は歌うのをやめて、理人の背中を優しくさすった。
理人の横に座ったまま、顔だけ近づける。
「・・たかひこしゃん、おこった?」
「怒ってないよ。孝彦さんは、理人くんのことが大好きだからたくさんお話したくて焦っちゃったんだよ。」
理人くんもたくさん話したい時、焦っちゃうでしょ?
にっこり笑う春に理人もつられて少しだけ笑う。
「うん。」
「理人くんも孝彦さんが好きだから、本当は色々話したかったんだよね?」
「うん・・・。」
「うまく説明できなくてイライラしちゃったんだよね?」
「ん・・。」
理人は、不安そうに瞳を揺らした。
「りひと、わるいこなの・・・。きらいになる?」
「嫌いになんてならないよ。孝彦さんも僕も理人くんと優人くんが大好きだよ。」
そう言って春は理人のおでこに口づけをおとした。
「さぁ、もう寝よう。大丈夫、理人くんが眠くなるまでずっと手をつないでるからね。」
な〜んにも怖くないよ。理人くんはいいこいいこ、と優しく頭を撫でると理人は口元を緩ませた。
「はるちゃ・・・だいすき・・・。」
「僕もだよ。おやすみ・・・・。」



春の手をぎゅっと胸に抱きしめて眠る理人は、まだ小さい。
この数日間で春は理人の言動に違和感を感じるときがあった。
理人は何かにふれ、自分のことを「わるいこ」というのだ。そういう時は決まって不安そうに瞳を潤まして春の温もりを感じようと必死な姿になる。

こんなに小さいのに・・・。
「大好き。良い夢を・・・。」
ゆっくりと理人の胸から手を抜いて、頭を撫でた。
理人も優人が可愛らしい寝顔を確認して、そーっと子ども部屋を抜け出した。





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