19

あぁ・・・・
これは、もしや・・・。

いや、恐らく間違いない。

孝彦は、ショックを受けている・・・。

思わずパチパチと瞬きをし、春はごくりと唾を飲み込んだ。

一波乱起こりそうな予感がしたからだ。


「・・・理人。」
孝彦は、理人に向かって手を伸ばした。
しかし・・・

「うー・・・。」
孝彦の気配に気付いた理人は、ぷいっと顔を背けてしまう。
そして、横に座る春のシャツに顔を埋めて孝彦を見ようともしない。
シャツをぎゅっと握り、頭をぐりぐりと押し付るばかり・・・。

そして、その反応にますます固まる孝彦。
伸ばされた手は微動だにしていない。

「孝彦さん・・・。」
茫然自失とは、まさにこの事だろうなぁ、と呑気に春は思った。

そして、春がもう一度孝彦の名を呼ぼうとした、まさにその時
「うー・・・

うぎゃぁぁぁ!!!!」

張り裂けんばかりの泣き声が部屋中に響き渡った。
春の腕の中で控えめに愚図っていた優人が顔を真っ赤にさせて大声で泣きはじめたのだ。

こんな時に限ってと思わなくもないが、相手は子ども。
もしかしたら、この異様な雰囲気を感じ取って不安を感じたのかもしれない。

気づけば、泣き叫ぶ優人、孝彦から距離をとろうとする理人、そしてどうしていいか分からず、固まる孝彦に春は囲まれていた。
そんな状況の中にいるのだ。
思わず「あぁ、どうしたものか」と、頭を抱えたくなるのも仕方がないだろう。


だが、しかし・・・

このままという訳にはいかない。


「孝彦さん、もっと理人くんの話を聞いてあげてください。ゆっくり、じっくり。大人とは違うんですから。」
春は、優人の背中をポンポンと優しく叩きながら、孝彦を見た。


「すまない・・・・。」
「僕ではなく、理人くんに謝ってくださいね。」
春の言葉に最もだと思った孝彦は、その大きな身体を理人に向けた・・・



が。

「うぎゃあああ!!!!」
「うわぁぁぁん!」
恐ろしいほどのシンクロ率。
(さすが、血の繋がった兄弟だなぁ・・・・。)

身体を向けた孝彦に理人がビクリと肩を震わせ、その理人の怯えを感じ取った優人がますます泣き叫び、その泣き声につられて大声で泣きはじめる理人。



「理人くんと優人くんを寝かせてきますね・・・。」
気付けは、時計の針は9時をさしていた。
眠さも加わって二人とも余計に愚図ってしまうのだろう・・・。
そう思った春は、片手で優人を抱っこして、もう片方の手で理人の手を握った。
目から涙をながし続ける理人は、春と共に立ち上がる。
理人は繋いでいない方の手で、ごしごしと目をこすっていた。そのせいで目の周りは赤くなり、なんとも痛々しい。

「理人・・・目が・・・。」
そんな理人に気付いた孝彦は手を伸ばしかけたが、先程拒否された事を咄嗟に思い出す。
また、泣かせてしまうのではないだろうか・・・

そう考えると何も言えなくなってしまう。
そして、春の手にすがるようにズルズル歩く理人を見ることしかできない自分に孝彦は何とも説明しがたい胸の痛みを味わった。

[ 19/22 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -