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「なるほど。」
孝彦は、何度も頷きながらパソコンの電源をおとした。

「すみません、お答えできなくて・・・。」
夕食の席で思わず固まってしまった春は、孝彦の問いに答えることができなかった。
なんと説明してよいのか分からなかったのだ。
そうなると、根が真面目な孝彦は食事が終わるとそそくさとネットで「お遊戯会」を調べはじめた。
呆気にとられる春を尻目に顔色を全く変えることなくパソコンを操作する孝彦は真剣そのもの。
そう、至極、真面目に・・・・。

「いや、春くんが気にすることはない。お遊戯の定義はなかなか難しいな。お遊戯会になると、範囲や境界が不明確になるとは奥が深い。」
(・・・そんなに難しいものではないような・・・)
珍しく愚図る優人をリビンクのソファーに座ってあやしながら春は苦笑した。
そんな春の横には理人がお行儀よく座っている。もちろん、春の体にぴたっと自分の体をよせて・・・。

「つまり、理人はお遊戯会でうさぎをやる訳か。踊りはするのか?」
理人に目線を合わせる為か、ソファーの目の前に正座で座った孝彦は真剣な顔で理人に話しかける。
「・・・しないよ。うさぎなの。」
「ふむ。という事は劇か?」
「うた、うたうよ?」
「ん?歌を歌うのか?オペラか?いや、ミュージカルか?」
「う?」
理人は、孝彦の言葉の意味が分からず泣きそうな顔をした。

一生懸命に尋ねる孝彦の質問に答えられない自分に歯痒さを感じているようだ。しかし、まだまだ幼い理人には自分の感情を言葉にすることができない。
「ぼく・・・・ぼく・・。」
「どうした?」
孝彦は、相変わらすの無表情。
理人は一度孝彦を見上げたがすぐに俯き、桜色の唇を噛みしめた。

「こら、理人。唇を噛むんじゃない。」
しかし、孝彦にはそんな理人の行動の意図が全く分からない。
なにせ、子どもと触れあったことなどないのだ。
そのせいだろう、理人の行動は孝彦にとって理解不能な上、不快でしかなかった。


「孝彦さ…「うー…。」

思わず、春が間に入ろうとしたその時…理人が控えめに、本当に控えめに声をだした。

ハッとして、春は横に座る理人に目を向ける。
そんな春の目には、膝においた手を握りしめ、小さな体を震わせながらポロポロと涙を流す理人の姿。

(こんなに小さいのに・・・・。)
顔を真っ赤にして、声をだすまいと堪えている姿に胸が痛む。
(もう少し、早くに止めに入れば良かった・・・。)
他人の自分が何度も口をだすのは憚られる、とただ様子を伺っていた自分を叱り飛ばしてやりたい。

「理人くん、孝彦さんは怒ってる訳じゃないんだよ?理人くんの事が大好きだから、色々知りたくて聞きたいことがいっぱいあっただけなんだ。」

そうでしょ?孝彦さん。と孝彦を振り返ると・・・。

そこには、






目を見開いて理人を仰視している孝彦がいた。



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