いち

図書室にある一冊の本を読む子がいた。
その本は古いようで色あせているのだが、その子の顔はどこか楽しそうだった。


「やっぱり素敵だなー」
「何が?」


いきなり声がしたので思わず飛び跳ねた。第三者が彼女を見たらかなり変だったかもしれない(汗)
しかし、どこから声がしたのだろう…?


「あぁ、こっちこっち」
「ん?」


肩をつつかれ、後ろを振り返ってみれば…思わず思考停止

同じクラスの鳳長太郎が背後に立っていたからだ。


「おっ鳳さんか。驚かさないで…(汗)」
「ゴメンゴメン。…珍しいね、こんな所に来るなんて。ここ余り人が借りないのに…」
「そう言う鳳さんも珍しいと思う。」
「あはは!ちょっと気になってね。ねぇ、何読んでたの?」
「古今和歌集。」


素っ気なく行ってしまう。実はあまり彼等…テニス部には関わりたくはない。
うるさいのは、幼なじみで十二分。


「すっごいの読むね…どうしてそんなのを読んでるの?」
「だってー…








この和歌集、ううんこの和歌たちすっごい素敵なんだよ!?別名『続(しよく)万葉集』で、まさに平安中期を代表する歌風だし“もののあはれ”だし、特に六歌仙の小野小町なんかすっごいんだよ!?絶世の美女とも世界三代美女の一人って言われてるし、歌風なんか情熱的で、繊細かつ技巧的で、女の子の心情が切々と伝わるしね、恋っていいなーとも思うんだよ!!しかも小町さん、能の演目である『通小町』に『卒塔婆小町』、『関寺小町』になっていたり、伝説の百夜通いも切なくって素敵!あっこれ知ってるかな?小野小町ってね、小野妹子を子孫とする小野篁の確かー…篁の息子が良真だからー…そう!孫にあたいするんだよ!!」


いきなり食いついてきた事に驚きを隠せない鳳。そんな姿は鳳にあの噂は本当のようだ、と思っていた。


はっと時間を見ればすでに五時過ぎ。サァーと青ざめていった。

全く。表情の激しい。


「ごっごめん鳳さん!これ、返してくれると助かる。それじゃあ!」

押しつけて図書室から出て行った。


「結構面白いんだ…みずきさん。」




バタバタと走っていく彼女の姿を鳳はただ見ていた。



(1/4)

前へ/次へ
栞を挟む

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -