さん

そして、待ちに待った当日。




みずきは予定よりも早く家を出ていた。理由は言わずもかな、赤也にあった。

「こういう時に限ってなんでやるかなー赤也は!!」

どこぞの漫画だ!!なんて言いながら東横線から東海道本線へ乗り換えていた。
家で準備をしていたら赤也の母に呼ばれたのだ。訳を聞けば弁当を忘れたとの事。だからみずきに弁当を届けて欲しいとの事だった。

どこぞのアニメなの!?
なんか少女漫画みたいよね♪
おばさーん!絶対楽しんでるでしょ!?
うふふ、わかっちゃった?

なんて言いながら結局赤也に弁当を届けるみずきもなんだかんだお人好しだ。

さて立海までの道のりだが、正直に言えば氷帝よりもずっと楽である。なぜなら横浜駅で東海道本線に乗り換えればすぐなのだから。(みずきは氷帝まで二つ乗り換えをしながら通学している。)
もとより立海には度々赤也の手伝いで赴いているし、人生の師匠がいるので行き方は熟知していた。
それにしてもだ、みずきは先日のスカイプを思い出す。


先日の夜である。お互いスカイプ上で話していた時、待ち合わせの話になったのだ。

「善哉さん、何処で待ち合わします?」
「あー、東京・・・違う、神奈川は初めてやしな・・・七夕はいいとこ知っとる?」
「そうですねー・・・普通に横浜駅のJR線改札口とか、西口の交番とか・・・・・・あ、善哉さんはどうしてこっちに来るんでしたっけ?」
「忘れんなアホ。部活の練習試合やって言っとるやろ。」
「ワォ、お金持ってる。」
「じゃかあしい。」
「ねぇ、何処となんですかー?(wktk)」
「立海。知っとるか?」
「え。」
「は?」


そっからは早かった。立海の中学側の正門で待ち合わす事になって、時間決めて、本人確認の方法を決めて。
まさか赤也と師匠の学校で練習試合をやるなんて、世の中は狭いもんだ。
自分の世界からもどりヘッドフォンの音に集中する。聴こえてくるのは丁度ぜんざいPの曲になった。
・・・やっぱり、このリズム感好きだな。

少しだけ、口角が上がった。






さて、立海の最寄り駅に到着し歩いて数分。ようやく立海の建物が見えてきた。
普段歩き慣れていない通学路はやっぱり歩きづらい。しかし、赤也に弁当を届けなければ。

「相変わらず、でっかいなぁ・・・」

それは氷帝もか。あ、いや氷帝よりこっちの方が趣がある気がする。
校内へ入り、取りあえずテニス部がいるであろうコートを探す。探し方は簡単だ。黄色い声を頼りに進めば良いのだから。
声を頼りに歩くとコートが見えてきた。ちょうど誰かが試合をやっているのだろうか、ボールの音がする。
携帯を取り出し赤也にメールする。するとすぐに「部室辺りで待機しろ!」と返ってきた。
「りょーかい。待ってて。」と返信しながら部室に向かう。送信し終え顔を上げると見覚えの無いユニフォームが視界の隅に捉えた。立海の芥子色のユニフォームでなく、言わば向日葵の様な黄色と竹の色のユニフォーム。なんとなく夏を連想させる色合いの物をきた人がちらほらと居るではないか。
赤也が言っていた、練習試合の学校の人かと軽くスルーして部室まで向かうとこっちだと言わんばかりに大きく手を振る幼馴染がいた。

「悪い!マジで助かったぜ!」
「もー、この馬鹿也め。しゃんとしてよね。」

なんて言いながら赤也に弁当を渡せばニカッと笑ってくれた。
赤也のこの笑顔を見れば、此処まで弁当を渡した甲斐があるなと気が晴れるのを感じた。
ちなみにこの弁当は赤也のお姉様である朱音お姉様の手作りである。何が何でも赤也は弁当を食べなければならなかった。
助かった!と言って赤也はみずきを見やった。

「お前さ、いつもと違ってスカート短くね?」
「あはは・・・変かしら。」
「いや、似合ってけどよ・・・」

それかよ、赤也はじと、とみずきの服を見やった。
みずきはあまり肌を見せたがらない事を知っている赤也にとって、珍しい物を目の前にしているのだ。
質素な黒の丸襟ブラウスに某青いエネミーを思わせるパーカー、スカートはミクを連想する丈の黒無地スカート。肌見せ防止の為なのか真っ黒のレギンスをはいており靴はスニーカーである。
ちなみに髪はいつも通りポニーテールにしているが青いシュシュで纏めている。
一見明るい少女を連想させる服だが赤也にとってとても珍しかったのだ。

「・・・・」

嫌だ。こんなみずきを善哉Pなんかに見せたくない。俺だけが見ていたい。
そう思ってしまう。しかしそんな事をしてもみずきは不機嫌になるし、何よりそんな結滞な理由で喧嘩したくない。

ここは、我慢だ、俺!

「とっところでよ、練習見てかn「みぃちゃああああああああああああんんんん!!!!!久っっっっっしぶりりいいいいいい!!!!!!」ってぶちょおおおおおおお!?」

出やがった。

幸村部長の声がしたと思えば部長がみずきをぎゅーっと抱きしめているんだが。
しかも相変わらずの猫かわいがり。


「おおお!戯○の友ちゃん風に言えば一週間と二日とほにゃららぶりですね!!幸村さん!」
「ねー!今日はどうしたの?」
「赤也が弁当忘れたんでとどけに!そんでもって待ち合わせでっす!!」
「赤也gj!って待ち合わせってなんだい?」

きゃいきゃいとみずきと幸村が話す度にお花が舞っているように見えてしまい、そのほわほわ感に赤也はついていけないでいた。
顔文字にすれば「( ゚д゚)ポカーン」である。

「赤也、ここにいたのか。」
「あ、柳センパイ。」

はっと我に帰ると自分のうしろに柳が立っていた。聞けばそろそろ試合だからアップしろ、との事。

「了解っす!」
「にしてもだ。・・・あれはなんだ?」

柳が指差すのは勿論みずきと幸村の戯れである。
あはは、なんて赤也らしくない乾笑が口から漏れてしまう。
柳はみずきに会うのはこれで二度目だ。しかし幸村と顔見知りだとは知らなんだ。しかもなんだあのふにゃりとした笑い方は。

「・・・少々、気が抜けるな。」
「柳。どうしたんだい?」

幸村がこっちに気付いたようである。先ほどみずきと漂わせていたお花な空気はなくなり、柳を見据えるは通常通りの部長の目だ。

「いや、赤也に様があった。・・・鷹狩とは知り合いなのか?」

柳のこの問いに二人は目を合わせた。

「あぁ、柳には言ってなかたっけ?」
「あ、柳さん(だっけか)?お久しぶりです。」
「あぁ、久しぶりだな。」
「で、俺とみぃちゃんだろ?去年の秋頃にであったんだ。」

そんでもって。

「みぃちゃんは俺の弟子で」
「幸村さんは私の人生の師匠です!!」



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