いち

恐怖のレポートとから暫く経ったある日






「なんだ、鳳の奴。」

部活中、跡部が鳳を見やり首を傾げた。
何時もと変わらないはずなのだが何かが違う。そう何かが違うのである。
・・・なんというか、お花が広がっているような感じである。
「長太郎!!お前どうしたんだ?」
「宍戸さん…!!」

宍戸も鳳の異変に気づいていたようで(呆れまじりに)何かと気をかけていた。
そんな鳳を見やっても我関せずとしているのが日吉である。
跡部は日吉を見て先日の事を思い出した。日吉が鳳の為と連れてきたみずきとまどかのことである。最初は自分達の気を引きたいためだけに日吉に引っ付いている雌猫と決めつけていた。だが対面して目を見れば嫌悪され、無関心となった。まどかに至っては冷たく、鋭い殺気を当てられたのだ。
それはまるで自由気ままな野良猫の様ではないか。
・・・正直言って跡部は不服だった。

雌猫は雌猫らしく鳴いていればいいのに何故あんな反抗的な目をする。更に厄介なのが自分とは違う青い目をしていた奴に鳳は惚れている事である。
首塚へ何故行ったのか、鳳を怖がらせて何が楽しい。時間が差し迫っているのに何故フィールドワークなんてしたのだろうか。

それが跡部は気に入らなかった。


風が凪ぐ。聞こえるのは跡部が思い描く雌猫達の声だ。


「けーちゃ「呼ぶなってんだろ」えー何でぇな」

やってきやがった。
跡部の眉間にさらに深く皺が増えた。それを知らんと言わんばかりに愉快犯、忍足はやってきた。

「榊先生が自分の事呼んどった。行った方がええんちゃうー?」
「・・・分かった。」

どうやら今回は真面目な用事があったようである。








跡部が榊先生のもとへ去り、彼が向かったであろう第二音楽室を見やる。
忍足は勘が良かった。だからこそ跡部が自分を愉快犯と言っている理由も読める訳で。
そんな跡部に対し、忍足は一種の危機感を抱いていたのである。

「(嫌な予感がしてならんわ・・・)」

そんな忍足を見てどうしたんだーと言わんばかりに向日が膝かっくんをしでかす。
ブヘッなんて言ってしまったが気にしない。

「侑士ー?」
「なんでもあらへんわ・・・あ、日吉」

目線の先にいたキノコヘアーの後輩に声をかける。一瞬無視されるもこっちへきてくれた。

「なんですか」
「日吉は友達、大事にし。」
「は?」



彼のすっとんきょな発言に思わず固まる日吉であった。
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