いち翌日。魔のレポートの提出日である。「鷹狩さあああああああん!!!!!!本当にありがとう!!助かったあああああ!!!!」 「あの本薦めてくれてありがとう!これお礼!!」 「マジで助かったぜ鷹狩!!今度食堂のおごるわ!!」 「本貸してくれてサンキュー!つか大正時代の本あるってお前の父ちゃん何者だよ・・・」 日本史の授業後、クラスメイトに怒涛の勢いで感謝され、みずきは目が回るかとおもった。でもクラスの役には立てたのだからと思うと少しだけ嬉しいや、と苦笑交じりに笑えばまどかにものすごい勢いで抱きつかれた。何故だ。 ちなみに鳳は土下座せんばかりの勢いで礼を言った様は歌舞伎役者のようであったとクラスメイトは語る。 さて、放課後まで時間を飛ばしてみる。 クラスの大半が部活やら習い事やらで教室にはみずき以外誰一人残っておらず、閑散としていた。 相変わらずテニス部の方からは黄色い悲鳴が沸き上がっているが今日は心なしか少し控えめに聴こえる。 さて、みずきの方へ視線を戻すと手に持った本を見ながら深い溜め息を吐いていた。ようやくレポートが終わったのに何故顔が曇っているのだろう。 「・・・どうしよう・・・」 みずきの持つ本を見やると一目でその本が古いものだと見て取れるのだが、よく見ると端が不自然に欠けているのである。 本の端を見るたびどんどん顔色が青くなっていっている気がするのだが。 「ー鷹狩さん?」 はっと我に返り、声がした方へ視線を向けると、そこに鳳がきょとんと首を傾げて突っ立っているではないか。可笑しい、部活へいったのではなかったではないか。 ハテナを大量生産しているみずきに鳳は苦笑まじりでこう答えてくれた 跡部さんが二年生全員部活出るなって。 どうやら部活に来た二年生の解放っぷりは半端無いものだったらしく、つまり、そういう事である。 それを想像してみると、なんとも不思議な感じがする。 まあ、それだけレポートに必死だった者が多かったという事だ、恐らく跡部も分かっているだろう。 「・・・で、鷹狩さんもどうしたの?顔青くしちゃって。」 さて、今度は自分が答えねばいけないようである。 どこから話せばいいだろうか、手元の本と後ろの塊を交互に見やり、そっと息をはいた。 「鳳くんごめんね?付き合わせちゃって。」 「ううん。むしろ手伝えて光栄だよ!」 そう言って鳳は紙袋を大丈夫といわんばかりに持ち上げた。 そんな鳳にありがとう、と申し訳なさそうにみずきは微笑んだ。 今二人はみずきの父が働く職場へ向かっている。おいおい、まだ早いじゃないかなんて思う方はいると思うが、そういう内容だったらどんなによかったか。今回は全く持って別の件なのである。 原因はいわずもかな、鳳の両手にもった紙袋だ。 さきほど、つい、とみずきが指差した方向にあったのは二つの紙袋であった。いや、正確には紙袋の中に入った本の山と言った方が良いのかもしれない。 ・・・なんだこれ、と鳳が目を丸くして驚いていると苦笑まじりにみずきは「みんな、貸した本なの」と答えた。さすがの鳳もぎょっとした。まさかこんな大量の本を貸していたとは。 紙袋の中をみると確かに様々な時代の偉人、そして民俗・歴史・考古学・宗教学などの多岐における本で埋め尽くされていた。 「鳳くん、調べごとってこれくらいやるんだよ」 ・・・少し耳の痛い所をつかれてしまった。 「鷹狩さん、これ全部君の?」 「半分は家の。もう半分のはお父さんの仕事用の本だよ。」 「え、」 「家にはまだまだいっぱい本があるんだけどねー」 まだいっぱいあるんですか。 軽くみずきがそう言いのけると鳳の目の前にずい、と手にしていた本を差し出した。 よく本を見やると端が不自然に欠けているではないか。 「・・・この本ね、お父さんの本の一つなんだ」 欠けた状態で返ってきやがりましたーーーーー (1/4) 前へ/次へ 栞を挟む |