「じゃあ、早速いこうか」

そう言いやるとみずきは机にドン、本を置いた。
そこまで多くはないはずだ・・・たぶん。
うわぁ、と鳳の口が引きつったのは言うまでもないが、これもすべて自分の為にやってくれていると思うと文句なんか喉の奥に掻き消えた。

「この本だけは家に帰ったら熟読してね。」

そう言ってみずきは山から一冊取り出し、鳳に渡す。そこまで分厚くなく、ホッとしてしまったのは鳳だけの秘密だ。

「何かなこの本・・・『日本人と怨霊』?」
「その本には将門さんは載ってはいないんだけど、将門さん調べるには日本の御霊信仰は把握してほしいからね!それに今でもそういう系の話は聞くでしょ?」

ね、と鳳に同意を求めたが彼は首をかしげてしまっていた。
予想は一応ついたが、それでも固まってしまった。

「・・・鳳くんは東京住み?」
「?うん、」
「・・・鳳くんに聞きます。」

将門さん、何で調べた?
そう問うと鳳は日本史辞典やら、両親の話と答える。
・・・うん、予想してた。・・・うん。
日吉がポンと肩を叩いてくれた。

いや、分かってる。分かってますよ、歴史興味ない人はこんな感じだって!でももうちょっと調べようよ、それじゃあ話が偏りすぎてレポートの意味がないと思いますよ。てかお父さんがこれ聞いたら卒倒しそうで怖いよ、もうお父さん年だしこの年でくたばったら考古学どうすんのさと突っ込みたくなっちゃうよってあれ、本気で考えたら将門さんについてのレポート二千文字いったら怖いから自重しなきゃ自重

「おーいみずきー。声出てる」
「・・・てへ。」

ついうっかり。



さて、予断はこれくらいにしてそろそろ本腰入れなければ。
鳳を見れば、何時語ってもOKと言わんばかりにスタンばっているのだ。時間も惜しいしそろそろ始めよう。

「じゃあ、鳳くんもある程度知っていると思うけど最初からいこうか。」

カリカリとみずきはルーズリーフに"平将門"と書き、ざかざか書き始めた。
さあ話していこうじゃないか。

「平将門さんは平安時代中期に活躍した武将さんです。この頃の武士は貴族のSP的存在で滝口の武士とかが有名です。清盛さんの代になると武士が政治に介入する時代がやってくるね。で、そもそも平氏は桓武帝の孫にあたる方が臣籍降下した時に氏を与えられたのが始まりらしいの。ほら、教科書に"桓武平氏"って記されているでしょ?将門さんは桓武帝から五代目にあたいします。そもそも桓武帝は何を行った人でしょう、鳳君は知っているよね?」
「えっ・・・・・・・ごめん。」
「はい、教科書見てね!長岡京から平安京へ遷都した人です。なんで遷都されたかは割愛して、後は最澄、空海の仏教の宗派を保護して坂之上田村麻呂に命じて蝦夷討伐をしようとしました。ここら辺はN○Kの『アテ○イ』を見てくれるとよく分かると思う。はい、話を将門さんに戻すけど、そんな将門さんは実は正確な生年や出生地は不明みたいでよく分からないの。でも将門さんの父である平良将さんは下総の佐倉を治めていたらしいし、多分出生地はそこだと思うよ。さてヒヨ、下総はd「千葉だろ」ピンポーン!さっすが!あ、鳳くんも廃藩置県以前の藩名、白地図で埋められるようにした方がいいよ。でねー・・・」



・・・そこからのみずきの怒濤の語り様は割愛しておく。
ただどれほど凄かったのかを表すなら、あの跡部が口を開けたままだったと明記しておく。




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