よん

「鷹狩さん!?」

鳳はまさかみずきが来てくれるなんて思わなかった様でひどく驚いていた。

「・・・なんで跡部さんも居るんですか・」

まさか跡部も居るとは思わなかった。
代表した日吉がそれを尋ねると鳳たけでは不安だったとのこと。
しかし口ではそう言いつつも本心が全く違う事を三人は気づいてしまった。
よく聞かないだろうか、「目は口ほどに物を言う」と。

「・・・鳳くんはどうしたの?」

取り合えず鳳を優先することにしたようだ。なぜなら鳳の方が泣きそうな顔で且つ無言で助けを求めていたからだ。例えて言うなら捨て犬に見つめられた気分であろうか。
半泣きでみずきに事情を話すと日吉と同じように顔を引きつらせた。

「・・・ご愁傷様」

これはヒドイ。いったい誰がこんな真似をしたのだろうか。鳳がこうなったのも納得いった。

「鳳くんは誰を調べたの?」
「平将門だよ」

平将門。
日本史の教科書を開けば必ず記載されている歴史の大物だ。
鳳が平将門を選んだ理由は至極簡単である。
ちょうど今授業で平安時代初期についてやっており、せっかくだし面白そう。と思ったのが理由である。

「将門さんかー…。鳳くんラッキーだったね」

そういってみずきはにっこりと笑って見せた。
ラッキー?はて、一体何がラッキーなのだろうか。

「私ね、古代の中で平安時代が一番好きなんだ!」

そう、忘れてはならないがみずきは歴史好きだ。
歴史の語りでしばしば赤也が頭を抱えるほど語ったのは記憶に新しい。特に少○陰○師の様に陰陽師や妖怪などの不思議な物事となると眠気がサヨナラしてしまうのだ。
そして、鳳がテーマにした平将門もその範疇に入っているのだ。
これを語らずに何をしよう。

まあ、暴走しないためにも鳳にどこまで書いたのかを聞かねばならない。
そこからどうやって話の流れを構築していくかが問題でもあるのだ。
鳳もその問いがくると思っていたのだろう、できるところまで書き上げたレポート用紙をみずきに渡した。
それを見やればどれだけ必死に思い出して書いたかよく分かった。鳳の必死さがよく伝わってくる。
しかし、突っ込んでもいいだろうか。

「ねえ鳳くん。」
「なっなんでしょう!?」
「将門さんと清盛さんの経歴、ごっちゃになってるけど・・・」
「えっ嘘!?」

どこが間違っているかよくわかっていない鳳はただ焦るばかりで、どうやらよく分かっていない様だ。レポート用紙を広げ指摘すると鳳はどんどん凹んでいき、最終的には机に伏した。
それを見たみずきは苦虫を噛んだみたいな顔になった。
まあ確かにみずきでさえも平安時代の戦に関わる事柄を覚えるのに苦労したが、それをレポートでやってしまったら即アウト。再提出フラグが立ってしまう。
故にきちんとした内容を鳳に伝えなければならないのだが・・・・・

「つーかwww鳳が突っ伏してるなんてwwwwwシューべぎゃ」

もうお前は黙れ。


もう一度鳳のレポートを見やる。
今文字が埋まっているのは一枚だけ。山口先生が求めるレポートは三枚から五枚であり、今のままでは到底間に合わない。よもやそれをすべて文字で埋めるなんて死○気弾がなけりゃ無理なんじゃない?と思う。

ならば、どうすべきか、答えは明瞭である。





「ヒヨ、デジカメあるよね?」
「あぁ、鳳にか」
「さすが!!頼んでいいよね」
「お願いじゃないだろ、それ」

今、この場でデジカメを持っている確率が高っかったのは日吉だった。案の定、持っていてくれたようで部室の鞄に突っ込んであるようだ。
ふと鋭い視線を感じるが三人は無視を決め込むことにしたようで、何の反応もしなかったが。

「・・・久々にアレやるのか。」
「うん。時間的に考えたら一番有効じゃない?」
「同感だな」
「お!じゃああたしも連いてくー」

わいわいと悪友は跡部と鳳の分からない、三人だけのワードばかりだしていく。そのせいで鳳は頭にハテナを大量生産しているのは仕方ない。
一体なにを考えているのか不明瞭であるが、レポート関係についてだと感じることはできる。
しかし何だろうか、この疎外感は。

「おいお前ら何考え「じゃあ持ってくるー」てんd「「行ってら」」俺様を無視すんじゃねえ!!」

どうやら跡部はその疎外感に耐えられなかったようで、加わろうとしたらこのザマである。まるで「関係ねぇだろうが」と言わんばかりの反応である。

「鳳ーアンタ書くものある?」
「うん。一応用意してるよ。」
「持って来る」
「俺も行くよ」
「おー」

なんというチームワークであろうか、日吉はデジカメを取りに行き、まどかは卓上の鞄を下ろしたりとすぐ始められるように準備をしだした。
見ていて思うのは三人は阿吽の呼吸で動いていることであり、いかに三人が信頼し合っているのか理解できる。
一人ぽつんと残された跡部は複雑な気持ちでそれを傍観するしかなかった。
先ほどからみずき達を睨んでいたのは跡部であった。何故なのかは推測できるだろうからあえて記さないが、それは見ていて気持ちのいいもんではない。


「ー…ねぇ、生徒会長さん」

跡部はその呼び声に顔を向けると頬に手をついてこちらを見るまどかと目が合った。
そして何故か媚を売るわけでないのに異様に笑っていた。

「・・・なんだ仙堂。」

こいつ、仙堂まどかの名は知っていた。
生徒会の一人が剣道部員であり、話を聞き流しているうちに何故か剣道部員全員の名を網羅してしまったのだ。ある意味いらぬ情報であったが
その中でもまどかの話はよく出ていたらしく、耳に残っていた。
その仙堂まどかが跡部を見ている。ニコニコと、異様に笑いながら。

「何考えているか知らないですけどー」







「おまたせー・・・ってあれ、ヒヨと鳳君は?」

何冊か本を抱えてみずきが戻ってきた。
二人がいない事に首をかしげるみずきにまどかはニヤ〜と笑いながら彼女の後ろを指した。
振り返ろうとすると日吉に脳天チョップ(弱)をくらってしまい変な声をあげてしまったが。

「あれ、どうしたんですか跡部さん。」

跡部の様子に気づいたのか、鳳が話しかけるも跡部はなんでもない、と返す。
それを聞いた鳳は特に気にする事無く席に座り自身の準備をしだした。
日吉はただただ無関心な目を跡部に向け、つい、と二人に視線を戻した。
そんな彼女たちに気づかれない様に跡部は手を握った。握った手はかすかに震えじわりと汗をかいていた。
彼女が向けていたのは、紛れもなく殺気であった。







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