よんさてさて、みずきの旗色が悪くなってきた。 「ちょっと待って下さいよ!私すんごく音痴ですよ!?皆さんの耳が腐りますよー!!」 『そう言う奴ほど歌上手いのが鉄則や。』 【さすが善哉wwww】 【鉄則wwwwwww確かにwwww】 【七夕の声は綺麗だとミタ!】 助けてよ、と画面(正確には放送を見ている人達)に助けを求めても雑鬼ーずに扮した彼らはきゃいのきゃいのと楽しんだコメントしか打ってこない。 さて困ったものだ。自業自得とはいえ、味方が少ない、というか 味方がおりません! 『じゃあ七夕が本当に音痴かどうか証明してみろや』 「あれ、なんか嫌な予感。」 『残り十分。七夕には天○弱を歌ってもらおーか。』 「嫌な予感的中!ってチャットの方にURLがきたんですけどー!?」 なにこれもう嫌だ!なんて叫べば大量の草が生える始末である。 『てな訳で七夕、歌え。』 「命令!?」 結局、善哉に一蹴りされてしまったみずきはボカロ曲を一曲歌う羽目になってしまった。 「この両手からこぼれそうなほど、君に貰った愛はどこに捨てよう〜♪」 もう、やけくそである。 『歌上手いやん。』 生放送後、みずきは善哉とまだ通話をしていた。通話を切っていなかった、というより力尽きて切れなかった、と言った方が正しい。 パソコンの前でへにょんと伏しているみずき、善哉にホモォを打たなければよかったと今更ながらに後悔していた。 「上手くないですよ・・・所々音程ずれましたし、高音出なかったし・・・」 『何処がズレてたんや何処が。』 あんなのズレたうちに入らへん、とズッパリ突っ込まれ「うっ」としか言えない。 確かにコメントも賞賛するのも流れてはいたのだが気がいっぱいいっぱいだったのか、どうやら気付かなかったようだ。 『ま、俺の見立て通りや』 「何が見立て通りですか」 『俺の勘』 画面越しにドヤッとにやついた顔をしている善哉が脳裏に浮かんだのか、みずきはフッと口が緩んだ。 『七夕の声はとおるし、音程完璧やし、問題あらへんよ』 だから、録音した次第送れ、と善哉が言った。 録音・・・? そうだ、録音で思い出した。これは善哉に言っておかなければ不味いのではないか? いや、不味い。 「善哉さん善哉さん。」 『あ?』 「私、録音のやり方知りません」 『・・・は?』 ずっとニヘ動は見るだけで投稿する、なんて考えてすらいなかったみずきは投稿する為のソフト等について調べた事がなかった。 一応パソコンに付属しているソフトは音楽の編集が可能ではあるが、基本的にアナログ人間である彼女には高度な技術であった。 その旨を伝えれば善哉は驚いた声を上げた。無理もない、確かにこのご時世、みずきのような人は少ないだろうから。 『音楽好きっていうのは嘘なん?』 「いえ、本当ですよー。お琴と三味線しか弾けませんが。」 『純日本か!!』 鋭いツッコミを善哉は入れると、深いため息を吐いた。 仕方がない、と善哉が呟くと割り切ったような声で善哉が驚く事を口にした。 『七夕は確か神奈川住みやな?』 「へ?そうですけど・・・」 少しだけ説明をしておく。 みずきが善哉の放送の常連になって以来、学年が一緒だったという理由もあってか意気投合した二人はよくチャットで放送以外にも会話していたりしていたのだ。 お陰でどこに住んでいるのかは二人とも知っているという訳である。 『よし、今度そっち行って音録るで。』 「・・・はい?」 『タメ同士、オフ会っちゅー話や』 間を置いてみずきの声が居間に響き渡った。 本日の善哉Pの放送タグ ・リスナー=雑鬼ーず ・七夕の日に善哉を食べよう ・善哉はドS ・哀れな子羊=七夕 等等 (4/4) 前へ/次へ 栞を挟む |