よん

慈郎はあまりニュースを見なかった。

暇さえあればテニスだったりゲームだったりをやって、堅苦しいものを遠ざけていたのだ。
堅苦しいのは勉強だけで十分。あと五月蝿い母親の小言くらいだろうか。
それを仲間に言えば全力で賛同してくれたので、これが普通と思っていた。

しかし目の前にいる子はどうだろうか、難しい本を持ち難しい物事を知っている。
その事に慈郎は一番びっくりした。

「ねぇねぇ、何でそんな難しい事知ってるのー?」


慈郎にとって不思議でならなかったのだ。


「は?好きだからに決まってますよ。」


それを「何言ってんだコイツ」と言わんばかりの顔で跳ね返されてしまった。
今度こそポカーンと口を開けたまま固まってしまった。





「いいですか先輩。」

子供に優しく話しかけるような口調でみずきは慈郎に語りかけた。

「人が好きな物は人それぞれでしょう、先輩はテニスの様に、私はコレの様に。正に十人十色です。」

コレと言うと傍らにあった本を握りしめた。まるで大切だと言わんばかりに

「確かに私が好きなものの傾向は少し堅いかもしれません。でもだからと言って否定するような仕草をされると不愉快です。」

だって先輩だってテニスを侮辱されたら嫌でしょう?

きっぱりとした口調でみずきはそう言う。確かに大好きなテニスを貶されたりしたらすっごく嫌だし、腹が立つ。

「歴史って本当に不思議で面白いんですよ?これは民俗ですけど、例えば柳田国男の『遠野物語』とかちょっと昔の文章ですけど魅了されちゃうんですよこれが。それに過去を生きた人達がどんな時代の渦中で生きてきたのかを知るのって楽しくって、でも教訓になったりするらしいし・・・・ま、止まらないんですよ!」

あ、でも陰陽道も捨てがたい・・・!!なんて拳を握って語るみずきである。


そんな彼女と自分がふとだぶって見えた。次の瞬間慈郎はハッとした。
好きなモノ(慈郎の場合はもちろんテニスだ)を話す自分にそっくりなのだ。

「好きな事柄になれば誰だって熱くなります。そういうもんです。」

それは強くなりたかったり、上手くなりたいという向上心。伝えたい、という想像力。もっと知りたいという探究心だったり
人が何かに夢中になるという事はそういう心がくすぐられるのだ。


そこまで深く考えた事がなかった


「君、本当に鳳のクラスメイト?」
「はい。確かに鳳くんとは同じクラ・・・ス・・・」

次の瞬間、サーとみずきの顔が青くなった。
しまった、忘れてた。目の前の先輩は

テ ニ ス 部 正 レ ギ ュ ラ ー

「な・・・んで鳳くんのクラスメイトって知って・・・」
「Eー?鳳が面白い子がいるーって言ってたの思い出したんだC」←天然?いいや確信犯だ。

確かに最初はみずきの勢いに押されそれを忘却の彼方に置いていたんだ慈郎であったが、よくよく彼女の顔を見てみると昼休みの時に鳳が凝視していた女の子である事を思い出した、というのが事の真相である。

あたふたしているみずきを見て百面相で面白いと思っていたのだが、


ぐわし


・・・また、肩をつかまれた。

「あれ?デジャウ?」
「せ、せせせせせ先輩!!今の秘密!秘密ったら秘密!!お願いですからああああああ!!!!!!!!」
「へ?」
「嫌ですよ!?女の復讐って歴史でも恐ろしいんですからあああああ!!!!!まだ人生終了したくないんでスうううううう!!!!!!!」
「おっ落ち着くC―――――――――!!!!!!!」


またもやみずきの暴走に付き合わされた慈郎であった




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