「赤也?入るよ」


一応一声かけてから室内へ入る。
ベットを見れば丸まって寝ている赤也の姿が見え、思わず嘆息した。


「赤也ー朝だよ」


カーテンを開けて日光を室内に入れるも反応なし。
良い度胸だなコノヤロウ


「ほら起きて赤也!!」


布団からはみ出している黒いもじゃもじゃを思い切り叩く。
やっと起き始めたのか、もぞもぞと動き始めた。

「…あ゙?みずきかよ」
「そーよ?あんたの幼馴染みの鷹狩みずきよ?」


にっこり笑ってみせればまた布団に潜り込んでしまった。

ここまでは何時もの事なので気にしない。
しかしここからが用心しなければいけないのだ。
細心の注意をはかりながら赤也を揺さぶる。時々叩いてやるのはイラつきだ。


「とぉっとと起きろ!!ワカメ!!」
「ワカメ言うんじゃねぇ…潰す…」
「逆に私が潰す。いい加減起きないと部長さんに連絡するよ!?」
「げっ部長は勘弁!」
「そう思うならとっとと起きやがれー!!(怒)」


こっちも時間ないんだから!と言うつもりであったのだが、言えなくなってしまった。
何故ならいきなり腕を引かれ布団の中に引きずり込まれてしまったからだ。

しまった。此だけは避けたかったのに!





「へへっ」
「あんたねぇ…」


訝しげに赤也を見上げれば、満足そうに笑う赤也と天井が見える。

平たくいえば赤也に押し倒されている図の出来上がりだ。


普通の女子なら、ここで頬を紅く染めるのだろうが、みずきはうざったいようで、赤也を睨みつけていた。


「さ、どこうか?」
「嫌だな」
「(ブチッ)とっとと退け!!モズクー!!」
「(ブチッ)モズクって何だよ!!この昆布!!」
「はっ!?ふざけんじゃな…って何ネクタイ外してるの!?Yシャツも…ってスカートに手入れるなー!!」
「いーじゃねぇかよ、俺らの仲だろ?」



ぶちぃっ



「んのっ…変態ワカメ!!」





ゴンッ






瞬間、赤也が死にかけたのは言うまでもない。












「ー…全く赤也は…」
「すまねぇって!」


お互いギャンギャン吠えながら全力疾走で駅まで走っていく。

ここで二人の距離に間があって可笑しくないのだが、二人は並んで二列で走っている。

みずき曰わく毎朝、しかも長年全力で走っていれば体力だってつく、だそうだ


毎朝の事であるためか、ご近所の方々からは優しげな目で挨拶される。
そしてそれを返すのにも慣れた。


「いやあああ時間ないいい!!」
「そう急ぐならお前も立海に通えばよかっ…べぶしっ!!」←鞄でブン殴られた


はっはっは、ざまぁ←鞄でブン殴った本人




そうもこうも走っているうちに駅に到着した。
此処からは別々だ。みずきは電車に、赤也はバスに別れる。


「つ…着いた…!!」
「すげぇ俺ら…さ…最速記録出…たん…じゃ…ねぇ?」
「す…素直に…喜べ…ない…!!」


ゼェゼェと息を整えながら軽口を叩き合う。
たいぶ整った所でみずきがじぃ、と赤也を睨む。


「何だよ」
「後でディアディアの黒糖シフォン奢ってね?」
「は?」
「朝の件。」


そう言えば気まずそうにあーだの、うーだの頭を抱えた赤也。

そんなに後悔するのなら、やらなければ良い話である。


「それじゃあ、私行くね?」


定期を出して改札へ足を運ぼうとするが、ふと言い忘れた事があるのを思い出し、赤也に向き直る。


「赤也、テニス頑張って」


なんだかんだ言ってもみずきは赤也が楽しそうにテニスをするのを観るのが好きなのだ。

自分ももっと日本史と音楽を探求しよう、と思わせてくれるのだ。


だからこの気持ちに嘘偽りはない。
ふわりと微笑みかければ何故かそっぽを向かれてしまった。



今朝の蹴りが効きすぎたのかな?
なんて思いながら渋谷行きのホームへ足を運ぶ。

今日も間に合いそうだ。





一方、赤也はその場を動けないでいた。

よく見れば、耳までも顔が赤くなっているではないか。


「ヤベェ…」


ふわりと微笑んだ顔が忘れられない。

今まで様々なみずきの顔を見てきてきたが、彼女は笑顔がとても綺麗だと赤也は思っている。
そして嬉しかった、自分だけにその微笑みを向けてくれたから。


「ー…あれ?赤也かよぃ?」


聞き覚えのある声に我に返ると丸井がこっちを見ていた。


「あ、丸井先輩」
「どうした?顔真っ赤だぜぃ?」
「べっ別にみずきの微笑み見て照れたんじゃ…‥あ。」


しまった、と言うように顔を青ざめていく。それと反比例するかのように丸井はニヤニヤしだす。


「ほーう?赤也がなぁー」
「だっえ゙ちょっ丸井先輩!?」
「さーて、柳にほーこくすっかぁ♪」
「ギャー!!止めて下さいっス!」


意気揚々とみずきとは反対方面のホームへ足を向ける丸井を必死に追いかける赤也であった。



必死に丸井を止めようと懸命になりながらも、頭の半分は冷静に、しかし熱い想いを秘めていた。








お前はこれを聞いたらどうおもう?







俺が、お前のことが…好きだなんてー…






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