よん煌煌と朝日が昇ると世界はようやく眠りから目覚める。…なんて小説らしい文ではあるが、それはある小説の文の一部だ。 何故、この一文を載せたのか、それは簡単だ。 鷹狩みずき、徹夜して読書にふけりました。 「…またやっちゃった…」 しまったと言わんばかりにみずきは額に手を当てる。 本を読み始めると時間を忘れて本を読んでしまうのはいい事なのだが、みずきの場合は朝日を拝む形になってしまうので、いけない癖だ。 ちなみに読んでいたのは「坂の上の雲(五)」だ。 スペシャルドラマとして年末に放送されているドラマの原作は本当に面白い。 司馬遼太郎の物語は、みずき#にとって一種の歴史書になっている。 そりゃフィクションもあるだろうが歴史がらみであるため、読み出したら止まらなくなるのだ。 さて、目を覚ますために私室から一階の洗面所に行く。 そしてリビングへ向かい、朝食と弁当の準備。 弁当を適当に作り終えると今度は朝食の準備だ。 今日は昨日の残りのけんちん汁となめこかけご飯。 そうしているうちに時刻は六時をまわっていた。 「あ」 みずきは急いで朝食を食べ、学校の準備をする。なんせ神奈川から通っているのだ。朝早くでないと遅刻してしまう。そして理由がもう一つ。 「おはよう、おばさん!」 向かった先は隣の家。つまりは切原赤也の家である。何故みずきがやってきたのか。 「おはよう、みずきちゃん。毎回ながらごめんねぇ」 そう、寝坊助な幼馴染みを起こしに行くためであった。 毎朝の習慣であるためか、切原家の玄関扉は鍵が開いている。そして穏やかな優しい笑みを浮かべた赤也の母が出迎えてくれるのだ。 「大丈夫、慣れてるし。それに大事な幼馴染みだもの。」 「それは嬉しいけれどー …あまり夜更かしは駄目よ」 「(ギクッ)アハハハハ…」 家族ぐるみの付き合いの所為なのだろうか、なぜバレる 乾いた笑いを浮かべたが、本来の目的を忘れていたわけではない。少し話をして急いで二階へ上がる。時間はまったをかけてくれないのだ。 それに幼馴染みが鉄拳制裁をされるのを想像したくない。 二階へ上がると、赤也の部屋の前でイライラしながら立ち尽くしている女性がいた。 年齢は大学生くらいであろうか。 「朱音姉ちゃん!」 「あっみずき!!」 彼女は切原朱音。今年高校を卒業した専門学生であり、赤也の姉である。因みに美容師になるべく鋭利勉強中だ。 「どう?」 「駄目だわ。あんの愚弟が!お姉様が起こしてやったというのにぃ」 「馬鹿也だ。あいつ」 朱音お姉様はキレたら恐いです。 時間を見て早く起こさなければ、と思った時、頭をぐしゃぐしゃとかき回された。 どうした、と思い朱音を見やると苦笑まじりにみずき#に笑いかけた。その顔には慈愛と同情が浮かんでいるではないか。 「朱音姉ちゃん、髪が崩れちゃう。」 「いっつも悪いねー愚弟起こしてくれて。てかみずき#の髪って綺麗だよねー、羨ましいわ。」 「姉ちゃんの方がサラサラじゃない。」 「髪質の問題だよ。髪質の」 あたしのなんかなーとブツブツいっている朱音であったが、下へ降りてしまった。 みずきにとって朱音は幼馴染みであり、本当の姉のように慕っている。 朱音自身、みずきを可愛がっているため端から見れば姉妹の様にみえる。 さて、話を切り替えるが、目の前には赤也の部屋、時計を見ればそろそろ危ない時間である。 → (4/5) 前へ/次へ 栞を挟む |