さん

頭に強い衝撃を受け、気づいたらみずきは床に倒れていた。
頭がぐわぐわするが時間が解決してくれるだろう。次に鳳を探してみる。彼の姿を見やると次の瞬間、ざっと顔色を変えた。
鳳は本棚の傍にいた。訳は簡単。足が下敷きになっているからだ。
しかし最初は体全部が本棚に潰れていたのだろう。体中傷だらけだ。


「ちょっ…え?鳳くん!?」
「あ、鷹狩さん、気がついた?」

鳳は振り返り、みずきににこっと笑いかける。だがそんな場合じゃない。


「笑ってる場合じゃない!足!」
「あぁ、大丈夫だよ。ほら。」


そういってガコンと鳳は足を取り出してみせた。みずきは目を見開いた。鳳の足から血が流れていたからだ。


「あーこれはすごいや。」
「あーじゃないっ!!大量じゃない!」
「もう、こうなると痛みすら感じないよ(笑)」
「痛みくらい感じなさーいっ!!」


がおうと吠えるみずきに。鳳は思わず苦笑い。
思いっきり失礼だが、こんな慌てるみずきが見ていて面白かったり。
ふと鳳は気づく。みずきが眼鏡をかけていないことに。


「鷹狩さん。眼鏡は?」
「うん。外れちゃったみたいで。見あたらないや。」


みずきは苦笑いを浮かべるがそこまで心配しなくてもいいようだ。一応誰なのかを認識できるのだから、何とかなるだろうと、みずきの考えだったり。(意外に大事だ)
鳳はみずきを見て怪我をしていない姿に何故か心の奥底からほっとした。


「鳳さん立てる?保健室行こう。」
「えっここで手当てしてくれないの!?」
「痛みを感じない人に容赦はしません」

ぴしゃりと言われてしまい鳳は苦虫を噛んだような後悔が湧き出る。
本当は痛いのだが、意地で大丈夫と言ってしまった先程の自分をぶん殴りたくなった。


「…少しは優しくしても「そう言ってダラける幼なじみを何度も見てるの。絶対嫌。」…そんなぁ…(泣)」


本当に容赦のないみずきだった。

泣く泣く立ち上がるとみずきが支えてくれた。そこまでお手厳しかったら本気で凹みそうだ。
待てよ、何で凹むんだ?ただのクラスメートに。


「そうだ。鳳くん。」


呼ばれてみずきを見やる鳳。かなり身長差があるためか、みずきが小動物のように見えてくる。


「ありがとう。庇ってくれて。」


ふわりとみずきは笑った。
瞬間、鳳に雷が当たったような衝撃を受けた。


「ー…だ。」
「ん?なんて言ったの?」
「なっ何でもないっ!!」


思い切り目線をそらした鳳。
みずきは聞き取れなかったのか、頭上にハテナがふよふよと浮かべている。


鳳にとって、ここまでの衝撃は初めてだ。

心臓がうるさい。

頭の中で疑問に思っていたパズルのピースがぴたりと当てはまった。


「鳳さん?」
「あっなっ何でもないよ!!ほっ保健室!保健室行こう!!」
「うっうん。」



こんな気持ち初めてだ。







ー…俺は、鷹狩みずきさんに恋をしました。


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