よん

はっと鳳が我に返れば、隣で忍足と向日が下を眺めていた。


「くそくそ鳳!俺らを差し置いて彼女作ったのかよ!!」


そう言いながらどこか楽しそうな向日。
しまった。鳳は苦虫を噛んだような気持ちになった。


「ちっ違いますよ!ボーっとしていただけです!」
「だとしても顔、赤いで?特に視線はあの眼鏡の子やったなぁ…」


したり顔で忍足は笑う。
完敗だ。そう思うと何故自分は彼女に見とれていたのか、と疑問に思うし、見とれていたことに少し後悔。

ぽん、と肩を叩かれた。尊敬すべき宍戸が諦めろというような顔をしているではないか。
思わず苦笑い。
しょうがない。後でこの二人に黒魔術でもするか。(え?)


「なんだ鳳。誰かに惚れちまったのか?アーン?」


出た。我らが氷帝テニス部の帝王、跡部景吾。彼が介入すると厄介きままりない。


「いっいえ。違いますよ!」
「E〜!?鳳好きな子でもいるのー!?」
「ちっ違いますって!別に彼女の事、そんな…」
「特定の子がいる事態、そうじゃねえか。」
「…そうなんですか?」


(((何気に鈍っ!!)))


「どういう意味ですか?」(黒)



鳳の黒スイッチON。
思わず冷や汗たらりなレギュラー陣。


「…まぁ誰や?その子は。」


よくぞ耐えた忍足!

周りを見れば日吉や樺地(?)以外喜々として鳳の言う名前を待ち望んでいた。
まるで誘導尋問を受けているように思えたのは鳳だけの秘密。


「…同じクラスの…鷹狩みずき#さんです。」





バキッ








突如何かが折れたような音が聞こえた。
見れば日吉の使っていた箸がポッキリ折れているではないか。


「おっおい日吉…?」

宍戸、軽く呆然。他もポカーンというような顔だ。


「…鳳。」
「なっ何?」


ワナワナと日吉の手が震えていた。










「…あのバカの何処がっ!!良いんだ?(大真面目)」

『は?』(全員)




あまりにも日吉が真面目すぎて思わず拍子抜け。


「どっ何処って言われても…」
「あいつは眼鏡ワカメで十分だ。普段はまぁ明るい方に入るが日本史の時間になると性格変わりやがるわ、歴史の事聞けば暴走するわ、急に仙堂とある小説のキャラになりやがるわ、俺に変な札はっつけてキョンシーやってと言うわ、仕舞いにはキノコと言って俺の髪でガスガス遊ぶわ…あ゙あ゙あ゙…!!今思い出しても腹が立つ…!!」


あれ?日吉さんキャラ変わってる?なんか昌浩みたい…


「あれ?日吉、鷹狩さん知ってるの?」
「一年の時、同じクラスだった。ま、仙堂含め悪友だな。」


今から「あんの狸じじいーっ!!」と叫んでもおかしくないくらい怒りで震えている日吉。
去年何があったんだ、と聞きたくなってしまう。


「そっそういえば二年ってまた偉人レポートあるんだろ?」
「あ〜っ!!それ俺もやったC〜!!」
「俺もだぜ!」
「あー懐かしいで。」
「アーン?」


宍戸、うまく話を切り替えた。
三年の跡部達はある意味懐かしんでいる。
どうやら二年の恒例行事のようだ。


「宍戸さん達は誰をレポートしたんですか?」


鳳が尋ねれば彼らの頭に縦線が一斉に見えだした。
あの跡部すら頭を抱えている…ある一種のトラウマか?


「宍戸と俺は…直江兼続だったよな。」
「…あぁ。でも共同だったからレポート数も二ば「それ言うんじゃねえぇっ!!」…激ダサ。」


まるでヒイイィと叫ぶが如く向日が言う。
激ダサとも言った宍戸も向日と同じ様に顔が青い。


「俺は篤姫さんや。」


忍足も顔が青い。…どれだけ大変だったんだ?


「俺は源義経だったC…」


あぁっ!ジローにも縦線ついてる!!


「俺様は椰楊子…ヤン・ヨーステンだったが…」

いきなり跡部が何も言わなくなった。どうしたんだろうと思っているとけらけらとジローが笑い出した。


「跡部が言わないなら俺がいうC〜跡部ね、再提出させられたんだよ?」
「ジロー!」


真っ赤になって怒鳴る跡部だが、全く持って威厳も怖さもない。
他のレギュラー達も、ああ…あれか…、と言うように空を仰いでいた…というより、我関せずだろう。

それにしても驚きだ。あの跡部が再提出だなんて。
現に鳳はものすごく驚いているし、日吉なんかー…笑ってないか?
面白がっているのかジローは更に続ける。


「椰楊子=ヤン・ヨーステンはオランダ人でしょ?日本に帰化したといっても、生まれはオランダなんだからダメって山口センセーが言ってたC」


けらけらと、笑っているジロー。

跡部が言うにはどうしても世界史の人をやりたかったらしいが、山口先生の授業担当は日本史。だから駄目だったのだ。

しかし跡部も考えた。盲点であろう毛紅人(オランダやイギリスの人たちのこと)のヤン・ヨーステン、日本名だと椰楊子の彼をを引っ張り出してきた。
これなら徳川家康にもウィリアム・アダムス(三浦案針)との繋がりもあるし、実際に東京に彼から由来している土地(八重洲)もあるし、大丈夫だと思ったのだ。(何せ、教科書に載っているし。)
しかし、結果はおじゃん。再提出を余儀なくされたのだ。


「で、結局、ペナルティで一日で仕上げないといけなくって、藤原道長にしたんだC〜」


ケラケラ笑っているジロー。跡部は恥ずかしいのか、真っ赤にして震えていた。


「ー…で鳳たちはどうするんや?」
「安心しろ。レポートの〆切が近づいてテニスに支障がでても目をつむっといてやる。」


実際に俺様も落ちたしな…と跡部が言うと宍戸や忍足たちが頷いた。

…どれだけ大変だったんだ!?


「で、どうなんだよ?」


ズイッと向日が二人を見る。


「俺は織田信長です。」


なるほど。日吉らしい答えだ。


「ふ〜ん信長か〜じゃあ鳳は?」


ジローの顔がキラキラしている。気になって仕方がないらしい。


「俺は…平将門か安倍晴明でも…」



ベキンッ


また日吉から何かが折れた音がした。
よく見ればスペアの割り箸が折れているではないか。
しかも今度は青ざめている。


「…鳳。」
「はっはい!」


青ざめながら言う日吉。もう青いキノコに見えてしょうがない。(コラ)


「頼むから安倍晴明だけはやめてくれ。」


そして日吉は土下座した…土下座?
あの日吉が土下座したー!?


((日吉のキャラが崩れていく…))


そう思った氷帝レギュラーでした。



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