さん俺のクラスには面白い子がいる。毎朝毎夕図書室に籠もって本を読んでいるんだ。 たまたまあの時、ある本を借りたくて放課後図書室にいったんだ(跡部さんにはちゃんと許可もらったし。)。 目的の本を借りれたし、早く部活に行かないと思ったとき、ふと普段あまり入らない日本史系統のある本棚を見たら彼女がいて本を読んでいたんだ。 彼女は面白い噂が中1の時から流れているし、ある意味俺達二年のちょっとした有名人。 俺は興味が湧いて、彼女に近づいて声をかけたらびっくりしたように辺りを見渡して、こっちだよと肩叩くと振り向いて…固まった。(あれ?) 「おっ鳳くんか。驚かさないで…」 本当に驚いていたようで目を白黒させていた。そんな姿見たら罪悪感が湧いてくるな。 「ゴメンゴメン…珍しいね、こんな所に来るなんて。ここ余り人が借りないのに…」 「そう言う鳳さんも珍しいと思う。」 これは素直に思う。それにしても彼女って大人しいな。 ふと俺が気になったのは彼女が持っている一冊の本。 かなり古いみたいだ。 「ちょっと気になってね。ねぇ、何読んでたの?」 「古今和歌集。」 素っ気なく返された。 彼女はレギュラー陣に興味がないみたいだ。 俺はびっくりした。 だって女の子っていつもコートに集まって奇声を出す子しか知らなかったから。それに、そういうものだとも思っていたし。 「すっごいの読むね…どうしてそんなのを読んでるの?」 「だってー…この和歌集、ううんこの和歌たちすっごい素敵なんだよ!?別名『続(しよく)万葉集』でー…」 おおお…食いついてきた。 そう言えば彼女にはちょっとした噂があるんだよね。 『歴史の話になると性格が変わる』 って。 さっき触れた話も『古今和歌集』という歴史的キーワードだし、噂は本当みたいだ。 ん?急に顔が青くなってきた? 「ごっごめん鳳くん、これ戻してくれると助かる。それじゃあ!」 そう言うと俺に本を押しつけてまさに脱兎のごとく図書室から出ていってしまった。 (途中、ゴンッて音したけど平気かな…) 今のが、素かな? どうやら俺は彼女に興味を持ってしまったみたいだ。 彼女は鷹狩みずきさん。 俺のクラスメイトで見た目はものすごく真面目。 いつも眼鏡をかけていて、天パなのか、ウェーブのついた黒髪をポニーテールにしている。 制服も崩さないできちんと着てるし… スカート丈だって膝が少し隠れる位だしね。 そんな鷹狩さんはもちろんクラスでは目立たない。 それにしても朝、話してみたけど鷹狩さんは仙堂さんと仲良いみたいだし、まさか、うみ○こ知ってるとは思わなかった(笑)。 今は昼時。 俺は屋上でレギュラーの人達と昼食をとっている。 「おいジロー!勝手に俺の海老とるなっ!」 「別にいいC〜減るもんじゃないでしょ?」 「まあまあ、良いじゃないですか宍戸さん。」 ふと屋上から下を見ると、まるで時が止まったように思えた。 …中庭に…鷹狩さんがいたんだ。 隣にいる仙堂さんと楽しそうだ。 それにしても笑顔がとてもー… 「何下見とるんや?鳳。」 → (3/4) 前へ/次へ 栞を挟む |