黄土衣 | ナノ


  「要求什麼」19/11


ここで視点をラビに変えてみよう。


ラビにとって今日は本当にツいてない日だった。
村人にはフルボッコされるわ、笑顔の超怖いおっさんに締め上げられ、同い年らしき東洋人に酷い態度。
そんでもってアクマの襲来。
もう散々だった。

本当はイノセンス回収だけの安い任務だったはずなのに。


そんなことを思いながら戦っていたからかもしれない。




船に流れ弾が被弾した。
ざあっと血の気が引くのを感じる。
あそこにいるのは・・・・・・・・・・




「ぼけっとすんでない!」

ブックマンの声にラビは我に返る。
ここはただ呆然としているのは得策ではない。だから、ラビはあえて瓦礫と化した船を見ないことにした。
言い方がアレだが彼らを見捨て、アクマを破壊することだけを考えた。

ラビ自身、見捨てたかったかもしれない。そうしなければこの冷や汗を忘れることができないと思ったのだろう。
後で、これを破壊したら彼らを助けに行こう。瓦礫が盾となって彼らが無事な可能性があるのだから。



戦闘に集中していると、妙に空気が熱くなるのを感じた。ブックマンも感じているのかすそで額をぬぐった。



ーなんだ、この暑さは。



そう思った瞬間だ。


アクマを貫く紅い閃光が見えた
















痛ってぇ・・・
お、視点が俺に切り替わってやんの。なあなあみてくれよ、今俺、瓦礫に埋もれてるのwww草はやさなきゃやってらんねぇwwwwwwwwww
あ、とりあえずトエスさんは無事。瓦礫の隙間で多少のかすり傷はあるけど平気みたいだ。

「篤志・・・無事かい!?」
「なんとかな。トエスさんは?」

なんて会話をしてるからかな、痛さも少しだけ和らいだ。
まったく、なんてざまだ。俺はただトエスさんと道案内していただけなんだけどな。
戯言ししたいところだけどな。

そんで握り締めていた呪われたトパーズを見やる。
あの時トエスさんが持ったら駄目だ、そう俺の勘が言ってたからな。どたばたに紛れて俺が手にした。
別にコレに魅入られたわけじゃない。トエスさんが手にしたらあの人が燃えてしまう、そう直感が言ってたんだ。



さっきトエスさんが言ってたこと、アレは絶対にこのトパーズの呪いだ。
おそらくコレは主と認めた人間にしか持つことができない。
認めぬ人間が手にすれば拒否反応を起こす。これがトエスさんが見た人が燃える光景なはずだ。
じゃなきゃトエスさんがあんな引きつった顔をするわけない。

「・・・トエスさん。」
「なんだい?」
「一体何があったんスか?この宝石・・・。」
「・・・・・・。」

トエスさんはだんまりとしてしまったが、意を決したように話してくれた。

もともとコレはこの洞窟にあったらしい。
あまりに綺麗だったから当時の船長が手にしたらしい。そうして売ろうとした瞬間、船長が燃えた。文字のとおり何もないところで火達磨になったんだ。

当然仲間は騒然、パニックになった。
船長からコレを取ろうとした仲間も燃え、まさに阿鼻叫喚と化したみたいだ。

・・・軽くいうけどな?これかなりのトラウマだぞ?
目の前で大切な人が火達磨になってんだ。しばらく火に近づくことができやしないさ。


続けると、異常だと感じた生き残ったトエスさん達はこの宝石に悪魔が宿っていると考えたらしい、教会の神父にコレを託そうとしたんだと。そりゃ原因の物を近くに置きたくないしな。
神父は徳のある人だったらしく悪魔を退治する祓魔師をやっていたみたいでさ、コレを見た瞬間真っ青になって「力を抑えることはできる。しかしこれは神聖なものが宿っている。もとあった場所に収めなければ再び災いが起こるだろう。」といったらしい。

そして神父は雁字搦めの封印を施してこの地にコレを返した。
その時にトエスさん達は海賊から足を洗って普通の生活に戻ったんだと。





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