黄土衣 | ナノ


  こいつらはふざけてんのか3/11


・・・でトエスさん達から引き継いで俺が話を聞いていまっす。
ついでに赤毛野郎はラビ、翁はブックマンというらしい。
なるほど、「指導者」と「本の者」か。
あ、翁はスペイン語話せたみたいだ。

「・・・ふと思ったんだが」
「どうしたのだ?」

翁が俺を見て首をかしげる。それにしてもえらい髪型&化粧だな。シャーマンか歌舞伎役者かって突っ込みたくなるわ。

「どうして先ほどはスペイン語で話さなかったんですか、翁。」

そのほうが村の皆も妙に警戒されずに済んだはずだ。

「喋ろうとしたんじゃが・・・」

とじとり、翁が赤毛を睨みつけた。

「こやつがワシの言う事を聞かずに突っ込んだ挙句、村の若娘に手を出しかけたんじゃ。」
「ちょ!!ジジイあれはラテン圏じゃ挨拶じゃnぐぼぁあああ!!」
「篤志、俺の娘がやられたんだ、もっとやってくれ」
「よしきた。」

思わず赤毛を殴ってしまった。うん、俺悪くないし。
トエスさん達も翁ももっとやれと言わんばかりだ。
後ででもいいからアマーリア(俺に催促した人の娘さん)を慰めないとな。

「ワシからも一つ聞いてもよいかの?」

翁がそう言う、耳をかたむければ少し予想していた問いが降ってきた。要約すればこうだ"どうして東洋人の俺が辺境のイベリア半島にいるのか"だ。翁は東洋からしたら一番端にあるから今みたいな発言をしたんだろうと推測するけど、一歩間違えればスペイン人とポルトガル人を敵に回してると言いたかったが言えなかった。
だってトエスさんの視線がむっちゃ怖ぇんだよ!!

「・・・色々遭ったんだよ。」

詳しい事は言う気がない。まだトエスさん達のように信頼した訳じゃあないんだ。






「俺からもいいさー?」
「ああ゛?」
「ヒッ!?濁音のついた"あ"は怖いからヤメテ!!」

知るか。
つかこいつ俺と同年代っぽいけど、さっき「クソ村」なんて村を侮辱したし気の合うアマーリアを怖がらせたんだ、許さん。

「で?質問は?」
「何でこの村はそんなに英語が嫌いなんさー?」

世界共通語なんさよ、と赤毛は言う。
確かに十九世紀となったこの時代はイギリスが武威を効かせて、大英帝国が中心となった国際体制だからな。そう思うのも仕方がないっちゃあ仕方がない。

・・・だがな

「あのよ、確かにそうかも知れないが都市部はともかくこんな小さな港町が母国語以外話せる奴がいると思ったのか?」

それに元敵国の言葉なんざ覚えたくもないらしいし?

「・・・・・・は?」

ぽかん、と間抜けな顔で赤毛は俺を見ている。翁は何か勘付いたのか俺を否俺達を冷静な目でみている。まるで自分の考えが合っているかを確かめたいと言わんばかりだ。
ここで俺は村の皆にこれ以上話してもいいのか仰いだ。皆何も言わないが目で肯定と伝えてくれる。




「ここはさ、アルマダ海戦を生き残った人々が作った村なんだよ。」








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