少女Mの見る世界。4/7



「世界は、残酷なんだから」

某巨人漫画のある台詞だ。
今でも胸の奥に残っている。







アレンとの任務が決まって、みずきは正直逃げ出したかった。
嫌われ、疎まれるのが分かっていながら教団関係者に会うなんて酔狂にもほどがある。・・・だが信頼しているコムイの手前だ、コムイの頼みならば・・・それに命令違反したら酷いペナルティが待っているのだ。従うしかない。

待ち合わせに指定された町でみずきはアレンを待っていた。
この町はみずきは任務途中によく訪れる町の一つである為、もはや町の皆とは顔見知りなのだ。
この町だけじゃない。他の国々の休息拠点といえる町では皆暖かくみずきを迎えてくれ、安らぎを与えてくれる。

みずきにとって安息の地は「世界」だった。

中でもスペインはみずきにとって特別な意味をもつ国である。
勿論、生まれ故郷である日本も大好きであるが、この国で父と母が出会い、祖母やいとこ達が住んでいるのだ。時代が違うとはういえ、どうしても思い入れが強くなってしまうのである。
・・・それでもって大ハマりしたヘ○リアの親分がの大ファンだーーーー、というのもあったりなかったり(←結構本音)


さて、時間を今に戻すとみずきは寝泊まりした宿をチェックアウトし、待ち合わせの教会へ足を運んでいた。時計塔の針を見ると予定よりもうんと早いが、みずきは気にしていない。なぜなら少し早く来て屋台を見て回りたかったからだ。
屋台は“どの国に置いても”活気で溢れており、その中に飛び込むのはみずきにとって枯れかけた心に水を与える事を意味している。

中へ入れば活気に溢れた人々が皆笑顔で商売を営んでおり自然と口角が上がる。朱色のコートを翻しながら屋台を見て回っていると、ある店で足が止まった。

「うわぁ・・・!」

それは可愛らしいピアスであった。
雫型に加工された金属フレームの内側の小さな青いガラスでできた雫が太陽に反射して優しい光を灯しているのである。
金属フレームの側面は繊細な模様らしく青い灯りによって周りに模様を映し出していた。
なんとも幻想的なピアスなのだろう。綺麗なそれを手に取りみずきはしげしげと見つめていた。
店番の老婆の話を聞けばそれは自分で作った代物らしい。
口から頂戴!なんて滑らしてしまったが、まあ自費でギリギリ買えるくらいだし、まあいいか。

「お嬢ちゃん、青もいいけど、これもどうだい?」

そう言って老婆がみずきにもう一つピアスを差し出した。
カーネーションの花を模ったピンクローズのピアスだった。細やかな葉の針金細工がアクセントになっており、青い方とは違った美しさと華やかさを宿しているように見えた。

「・・・むっちゃ綺麗・・・」

どうしよう、青と桃どっち買おう。
二つを見比べてみるも迷ってしまい決められない。
うーん、と頭を抱えるみずきに老婆が嬉しそうに微笑んだ。

「じゃあ青い方のだけお駄賃もらうわ。」
「へ?」
「そんなに迷ってくれるなんて久方ぶりで嬉しいの。だからどちらも持っていき!」
「おばちゃん良いの?」
「この国を第二の故郷と言ってくれたんや!うん、とまけたる!!」
「やったー!ありがとう!!」

まさかまけてくれるなんて!

「それにお嬢ちゃん、幸薄そうやし。」
「おばちゃん、それ言っちゃダメ。」


何はともあれ、ほくほくとした顔で喜んでいると一つ問題が浮かび上がった。
どちらをつければいいだろうか。なんて老婆に聞けば何故か青!!と強くプッシュしているので後で青をつけることにする。

「せや、お嬢ちゃん」

紙袋にピアスを入れてくれながら老婆はある事を提案してくれた。
少しだけ目を見開いたみずきだが、苦笑いを浮かべながら老婆に礼を言う。
・・・正直、成功するかなんて分からないが、老婆の言うことに乗ってみようと思いながらもう一度ピアスを見やる。
ふと思ったのだが、桃の光が可愛らしい暖かな灯りだとしたら青は清廉とした神々しい灯りみたいだと感じたのだ。

なんだろう、ともう一度老婆を見やると

「あ、一つ言い忘れてたわ。」

青いソレ。ガラスやなくて『アクアマリン』っつー宝石や。



















一瞬、意識が飛ぶかと思った。














ゆさゆさ

誰かに肩を揺さぶられている感覚がする。
すう、と意識が浮上する。

ぱちりと目を覚ますと視界にアレンが写った。

「あ、起きました?」


どうやら寝てしまっていたらしい。
そうだ、そうだった。休憩を取っている時に寝てしまったのだ。


―――オコラレル


「ー!!申し訳ございません!!」
「うぇ!?僕怒ってませんよ!?てかそんなことで怒りません!!」

何か焦った様に弁解するアレンにみずきはハテナを大量生産をしていた。
おかしい。これが教団内だったら・・・


「怒らないのですか?」





本当に訳が分からなかった。







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