Feria de Abril3/7



翌日、アレンはオーナーの荷車に乗せられて隣村までやってきた。
ちなみにあの後アレンは一睡もできなかったのは本人の秘密である。
到着までの始終、みずきは無表情のままであり昨夜とのギャップにどこかいたたまれない気持ちとなった。

さて、その隣村であるが、予想通りというか、期待を裏切らなかった。
村は彩色豊かな花々で彩られており、ふわふわと花弁が舞う光景は何とも幻想的である。

・・・町中に積りに積もった花弁の山さえ見なければの話であるが。

「うわぁ・・・(引)」

これは流石のアレンも引いた。見方を変えれば美しい風景なのだろうが、これは無い。
宝の持ち腐れとは正にこれである。
村人も同じ考えなのだろう、アレンと全く同じ顔をしていた。
みずきを見やるもやはり変化はなかったが。

「行きましょう。」

気を持ち直してアレン達は町の中へ入っていった。



「全く!!春祭りじゃないんだから勘弁してほしいわ!!」

村人達から聞く話のほとんどは花弁の愚痴であった。これでもかと言う位吐き出すということは比例するくらい鬱憤が溜まっているという訳であって。
全く、気の毒にも程があるというものだ。
しかし村人の愚痴のお陰か、情報はすぐに集まった。

日中、花弁は全く降らず朝になるとこんもりとつもっているようだ。
村人が交代で監視していた所、夜中の二時。つまり丑三つ時の時降り始め、朝になれば鬱憤のそれになるようだ。
降り積もる花弁の中でも特に酷いつもり方をしている場所がある。墓地だ。
どうやら村はずれにある墓地に何かがあるとみていいはず。
と、言う訳でアレンとみずきは丑三つ時を見計らって墓地へ向かおうと言う事でまとまっている。
その時間帯まで何しようか、と考えを巡らせていた。









さて現在時計の針はお昼時をさしている。アレンはというと何故かバルで働いていた。
アレンだけでなくみずきも忙しく店内を走り回っていた。

「エk・・・ウォーカーさん!海老のアヒージョ入りました。あとペンネ二つ!!」
「はっはい!」

目が回る程の忙しさにアレンはてんてこ舞いである。


なぜ、こうなった



原因は約2時間前にさかのぼる。


ここの亭主に聞き込みをしていた時にそれは起こった。

「「太陽の欠片?」」

二人して疑問の声が上がった。太陽の欠片とは一体なんだ?
オーナーの話によると、太陽の欠片とは例の墓所内の墓石に埋め込まれている真っ赤なルビーの事らしい。
その昔、この村出身の若者がいた。彼はスペイン黄金時代に南米に渡り富を成した者であり、欠片が埋まっている墓石の下には彼が埋っているようなのだ。
生前、彼は成した富の中でも太陽の欠片と呼ばれるあのルビーをこよなく愛でていたようだ。
・・・で、ここから耳を疑った。

オーナー曰く、「その人、セニョリータ(未婚の女性)に会う度、真っ赤なカーネーションを手渡したそうでな、手元に生花がなけりゃあ自分で作っとった様やでー?」

造花。実は降り積もった花弁は本物だけでなく造花の花も存在していたのだ。
瞬間、脳裏に何かが繋がった。

「店長さん!詳しく教えて下さい!」
「えー?せや、セナの時間まで働いてくれはったらええよー」

※セナ=夕食の時間であり、大体スペインだと21時を指す。
「みずき!手伝います、と言って下さい!!」



そんな訳でアレンとみずきは店を手伝っている訳である。
全ては情報のため、そう、情報の為だ。そして美味しいまかないを頂く為でもある←

ちなみに客の前で「エクソシスト様」というのもアレなので、店内では名字で呼ばれているアレンである。

アレンにぶち当たっている言語の壁であるが、それはジェスチャーで何とかなっていた。運がいいのか悪いのか仕事内容の多さを把握していなかったアレンは聞いていない!と叫びたいようである。(みずきは大変である、と言っていたのを聞いていなかったアレンの自業自得であるが)

よくよくみずきの方を見るとイギリスでは見られない、アレンにとって不思議な光景がそこにはあった。

「美しいベッラ。食事を彩る華になってはくれないか?」
「仕事中ですのでお断りです」

・・・みずきをナンパしていたイタリアーノは見事に玉砕していた。
これだけではなく、店内にいる女性達は男性陣にしょっちゅう声をかけられていたのである。

聞いた事はないだろうか。ラテンの血の者は女性に声をかけるのが礼儀であると。
歯に浮く様な言葉の数々は全てそれなのである。(特にローマ帝国の一部であったイタリア、スペイン、フランス等が良い例だ。)
またラテン圏の思春期の女の子は二中、声をかけられなかったら自信をなくしてしまうそうな。

みずきをよく見てみる。
彼女は注文を受けるたび、食事を運ぶたび、声をかけられたり花を渡されたりしているが、ものの見事にあしらっている。
そういえば、祖母がスペイン人と言っていたが少なからず影響を受けているということなのだろうか。
それに加え、重い食器の数々をそう感じさせない様に軽々と運んだり、コロコロ変わる客の注文をキチンと聞き取り、会計等をこなしているその逞しさにアレンは心の底から敬服せずにいられなかった。


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