少年Aの困惑1/5
アレン・ウォーカーは非常に混乱していた。
普段とても優しい笑顔を浮かべるリナリーが怖い顔をして「あの子と仲良くしちゃ駄目!」と自分に向かって言い、コムイが「あの子は悪い子じゃないよ」とリナリーを戒めれば兄妹喧嘩が勃発したのだ。
どうしようと思って助けを傍に居たリーバーに求めるも"あいつ"関係は仕方がないと匙を投げられてしまった(リーバーは"あいつはいい奴だから構えなくていいぞ〜"なんて小声で言っている。)
とりあえず、どうしてこうなったか整理していこう。
少し教団の任務に慣れたこの頃の朝、コムリン2をプレスした科学班はいつになく爽やかな顔をしているようである。アレンはいつも通り食堂で朝食を食べていた。激務である任務を終えた後の教団・・・否ホームはアレンにとってとても居心地がいいのだ。
そうしている内にリーバーに呼ばれ室長室へ行けばコムイが寝ているのだが、今回は珍しく起きており、何故か人払いをしたのである。
つまり室長室にはアレン、コムイ、リーバーの三人だけである。
任務内容は至ってふつうだった。スペインのセビーリャ地方にイノセンスの反応があるので、回収しに行くというもの。
「ー・・・で、此処からが僕にとって本題なんだけど」
一人任務だと思っていたアレンは一旦浮かした腰をソファーにおろした。
「今回任務先で落ち合ってもらいたい子がいるんだ。つまーり!二人任務なんだよアレン君!」
「へ?合ってもらいたい子?」
「うん、君と同じエクソシストだよ」
ニコリと笑うコムイ。アレンはまだ会った事のない仲間に会える事に胸を高鳴らせた。
いったい、どんな人なのだろうか。想像は膨らむばかりである。
「その子と任務を終えたらあの子が持っている複数のイノセンスを持って帰って欲しいんだ。」
あ、これが本題の一つめね。とコムイが言う。
「へ?帰らないんですかその子」
アレンがそう思うのも仕方がない。彼はイノセンスを回収したら直ぐさま教団に戻ってきた経験しかない。さらに教団に帰らない人と思い浮かべるのは唯我独尊の彼の師匠だけである。
コムイもアレンの返答を予想していだろう、答えはすぐに帰ってきた。
「だって、針のムシロに誰だって居たくないだろう?」
「・・・は?」
「あの子・・・みずきちゃんにとって教団は安らげる家ではないんだ」
ちゃん付け、ということは女性なのだろう。だがアレンが聞きたいのはそれではない。
「みずきちゃん自身はとても良い子だよ?只、彼女の適合したイノセンスの能力のせいで周りから白い目で見られている」
アレン君も左手や呪いの傷で似たような目に遭わなかった?
コムイの言葉に頷くものがあった。生まれた時から奇怪であったイノセンスである左手のお陰で親に捨てられ、アクマにしてしまったマナをこの手で壊し、顔の傷で嫌な顔を散々されてきた。
黒の教団はその特有な環境の為、奇怪な手も呪いの傷も気にしない人がたくさんいる。その環境下でも白い目をされるとは一体何の能力を彼女は持っているのだろうか。
ねー!みんなヒッドイよねー。コムイがブチブチ言っており、その傍らで俺も注意してるんスけど、、、と嘆息まじりに呟くリーバーの姿。
ぶっちゃけ、そんなコントはどうでもいいのだ。つまりコムイは何をいいたいのだ?
じーっとコムイを見ていると視線に気付いたコムイが苦笑を浮かべた。
「二つ目は僕からの個人的なお願い!みずきちゃんとお友達になってもらえないかなーって」
そう言った途端、勢いよく室長室の扉が開いた。何事だと思い後ろを向けばダークブーツを発動させたリナリーがそこに居たのだ。
そして冒頭に戻る訳である。