これが今の私の現実4/4
「はっ!」
みずきは飛び起きた。よほど魘されていたらしい、寝着に汗が染み付いている。
ふと周囲をみる。そこは小さな部屋だった。
思い出せ、自分は宿の中で寝ていたじゃないか。
「なんだ・・・夢・・・」
そう自分を安心させると再びベッドの中に潜り込んだ。
傍らにあった八房を握りしめて。
あれから1年が過ぎ、みずきは怒濤の中を生きていた。
八房はすっかり自分の愛刀と化しており、なくてはならない存在である。
また眠れそう、と思ったのだが鞄に入れていたゴーレムがけたましく鳴り響き寝るに寝れなくなってしまった。
ちくしょう、誰だと思いつつ通信をオンにする。まぁ、誰が連絡してきたかは絞られるので隅に置いておく。
『もっしもーし、みずきちゃん今大丈夫かなー?』
「オーラですコムイさん。睡眠時間削らせる気ですかこのやろー」
『あはは…ごめんよ、この時間帯は誰にも気づかれないからね♪』
「戻ったらトマティーナにするんで覚悟して下さい」
いやん怖い☆と言うコムイに一瞬殺意が湧いても許されるはずだ。
「明後日なんだけど…ちょっと他の子と一緒に任務に当たって欲しいんだ。」
一緒に、その言葉にみずきの顔は強張った。そしてきつく八房を握り締めた。
嫌だ、またあんな思いはしたくない、一緒って笑っていたのに裏切られた、またあんな思いをしなければならないのか
「い…やです、一人でいけます。」
『大丈夫だよ。まだ入りたての子で神田しかペアになっていないから』
「でも私の力を見れば離れます!!やだ、あんな思いするのは…」
怖い。
今みずきはこの思いでいっぱいいっぱいである。
『みずきちゃん。』
コムイの優しい声が耳に響いた。
『大丈夫だよ。彼はね力の異様さで嫌う子じゃないから。みずきちゃんと年が近いからすぐ仲良くなれるよ』
だから、大丈夫。
幼子に語りかけるようにコムイは言葉を紡いでいく。悪夢を見た幼子を慰めるかのように。
それからしばらくの間コムイと話した。場所はどうやら今居る国で大丈夫な様で少しホッとした。だって大好きなキャラの国なのだ。正直言ってもっと堪能したい。
資料は明日、郵送で届くようだ。宿のオーナーに話さないと。
『…それと、中央庁からも"指令"が届くらしいから、気をつけて』
…今度はどんな顔をしているのだろう、自分は
「はい、了解です。その子が来るまでにはお掃除しておきますね」
顔が険しくなっているであろうコムイに向かって笑ってみせる。
何か言いたげであったようだが強制的に通信を切ったので分からなくなってしまった。
もう一度ベッドに潜り、ぼう、と天井を見上げる。見えるのは木の模様だけだ。
ふと左手に冷たさを感じる。目線をそっちに動かせば今にも泣きそうな金髪をツインテールにした女の子がみずきの手を握っていた。
黄金に輝く瞳から今にも涙がこぼれ落ちそうだ。
だが握ってる手はまるてみずきを励ましている様である
「…大丈夫だよリーエ。私は大丈夫。」
ね?とみずきが女の子に微笑むと泣き出しそうだが笑顔を返してくれた。
何か、歌ってくれる?と女の子に頼むと仕方ないなぁ、といわんばかりの笑顔で歌ってくれた。
それがみずきが好きなアニメで使われていた歌で、思わず笑ってしまった。
大丈夫、みんながいるから、まだ頑張れる。そう思えば自然と瞼が重くなっていったのだった。
『―――――――ここはあったかな海だよ…』
最後までリーエ…ティアリエの歌声は優しかった。